第19章 scene4:宴会場
それでもNINOが来てくれたことは、知ってる顔が長瀬さんと坂本監督だけで、ちょっぴり心細かった僕にとっては凄く嬉しいことで…
「ねぇ、NINOもお泊まりするの?」
期待半分でNINOに聞いてみると、NINOはクスリと笑って、
「HIMEちゃんがお望みなら、ね?」
僕に向かってウインクを一つ寄越した。
そうなると当然、
「お泊まりしよ?」
ついつい甘えてしまいたくなる僕。
勿論、NINOには相葉さんてゆー恋人がいることも知ってるし、経費の問題もあるだろうから、そう簡単にはいかないことは分かってるんだけどね?
でもそんなのは、僕のギャラをNINOのお泊まり代にして貰えば良いし、相葉さんにしたって僕からのお願いだって言えば、きっと笑顔で許してくれる筈だもん。
「ね、ダメ?」
僕は、ボディラインがくっきり出る黒いスレンダーなワンピースの裾を、クイクイと引っ張りながら、甘えるようにNINOを見上げた。
するとNINOは、
「仕方のない子ね? HIMEちゃんにそんな顔されたら、嫌って言えないじゃないでしょ?」
真っ赤な口紅を塗った唇の端をクイと上げて笑った。
「よし、じゃあ簡単に説明だけするよ?」
坂本監督がパンと手を叩いて言った。
僕とNINOはほぼ同時に坂本監督を振り返り、ほぼ同時にコクリと頷く。
僕はNINO程器用じゃないから無理なんだけど、振り返った瞬間のNINOのお顔は、おもう既にお仕事モードに切り替わっている。
やっぱり”ゲイビ界の男の娘クイーン”と呼ばれるだけあるかも。
それに比べて僕は、NINOとお泊まり出来ることが嬉しくて、一生懸命お顔を引き締めようとしても、ついつい頬が緩んじゃうんだもん。
おかげで長瀬さんからは”集中しろ”とばかりに睨まれるしさ…
まだまだだね、僕は…
きっとお仕事に対する意識が、NINOとは格段に違うんだろうな…
はあ…、もっとNINOを見習わなくっちゃ。