第18章 scene4:露天風呂
僕の乱れた呼吸と、腰の痙攣が漸く治まって来た頃、
「日も落ちてきたし、冷えるといけないから、そろそろ宿に戻るか」
機材やらを詰め込んだリュックをスタッフさんに渡し、坂本監督が僕を振り返った。
僕はと言えば…
まだ身体の倦怠感は抜けきってなくて…
「あのぉ…、手、借りても大丈夫ですか?」
近くにいたスタッフさんを上目遣いで見つめ、小首を傾げた。
おねがい♡、って。
するとスタッフさんは顔をボッと赤くして、頭をポリポリと掻き始めた。
あれ?
僕、なんか変なこと…言ってないよね?
あ、もしかして僕がスタッフさんに向かって色目使ってると思われたとか?
ふふ、それはないよ(笑)
だって僕、彼のこと好みじゃないもん♪(←失礼な!)
でも、勘違いさせちゃったのは間違いなさそうね?
仕方ないな…
「長瀬さん、浴衣直して貰っても…?」
僕は坂本監督と談笑する長瀬さんに声をかけると、スタッフさんの手を借りることなく立ち上がり、浴衣の裾を手で叩いた。
「ったく、いい加減覚えろよ…」
「はぁい…」
僕が唇を尖らせると、長瀬さんは溜息とガッチリと広い肩を同時に落としてから、僕の浴衣の襟元に手をかけた。
「あ、ねぇ、お部屋にお風呂あるんだよね?」
「ん? ああ、お前の部屋は撮影にも使うから、特別にな」
「じゃあ、お宿に戻ったら入っても良い?」
お外での撮影だと、どんなに気を付けていても砂やら草やらが身体に着くし、一応ウェットティッシュで拭いてはあるけど、太腿だってカピカピになっちゃうし…
「だめ…ですか?」
「まあ…、残りの撮影は飯の後だって言ってたし、一風呂浴びるくらいは良いんじゃねぇか?」
「ほんと? やったぁ♪」
「あ、でも一応坂本監督に確認だけ入れとけよ?」
「はぁい♪」
良かった♪
だってこんな身体のままでお夕食とか…、やっぱヤじゃん?
せっかくの美味しいお料理も台無しになっちゃうもん。