第17章 scene4:温泉宿
イケメン(櫻井くんには負けるけど♪)店員くんにお金を渡し、代わりにお釣りを受け取る。
その時、
「あっ…」
ちゃんと受け取ったつもりの小銭が、いくつか僕の指の間をすり抜け、チャリンと音を立てて床に落ちた。
僕は落ちた小銭を拾おうと、咄嗟に腰を屈めた。
…んだけど、ダメじゃん…、だって僕ノーパンだもん。
お尻丸出しになっちゃうじゃん?
…って思った時にはもう遅くて…
見た…?
ねぇ、僕のお尻…見えちゃった?
レジに立つイケメン店員くんをゆっくり振り返ると、イケメン店員くんは思いっきり顔を引き攣らせ、ブンブンと何度も首を横に振った。
そっか…、そうだよね?
うん、分かるよ?
見えちゃったんだね?
首は横に振ってるけどさ、顔にはちゃーんと“やべーもん見ちゃったよ”って書いてあるもん。
僕は急に恥ずかしくなって、
「お客さん、お釣り…」
引き留めるイケメン店員くんの声を無視し、落ちたお釣りを拾うこともなく、店を飛び出し車に乗り込んだ。
「出して…? ね、早く出して…?」
自動で閉まるドアのゆっくりとした動きがもどかしくて、力任せにドアを閉め、助手席に座る長瀬さんの肩をペンペンと叩いた。
「なんだお前…、万引きでもしてきたか?」
はあ?
違うし…、僕そんなことしないもん。
「い、いいからとにかく早く出してよ…」
涙目になる僕を、ずっとカメラを構えていた風間ポンが覗き込む。
その顔には、さっきまでの“ニッコリ”は全然なくて…
でも、僕のただならぬ様子を気にするでもなく、優しいんだか何だか分からないような…、元々ボキャブラリーの足りない僕にはとても例えられないような、複雑な顔をしている。
そして、
「とりあえず出しちゃって下さい」
運転席に座るおじさんに言うと、僕の手からそっとティッシュの箱を取り上げ、取り出した一枚を僕に差し出した。
あれ?
案外優しいとこもあるのね?