第17章 scene4:温泉宿
グッタリ(僕的には“ガックリ”だけど…)する僕の前に、あとちょっとの所で届かなかったティッシュの箱が差し出される。
僕は肩で息をしながら、箱から飛び出たティッシュを一枚…ピッと引き抜くと、それで大量のミルクでベチョベチョになった手を拭いた。
そしてもう一枚…
今度はミルクやらなんやらでテカテカになった息子くんを拭いた。
でも一枚や二枚じゃとても足りなくて…
僕はティッシュの箱に手を突っ込んだ。
けど…
「あ…れ…?」
嘘…でしょ?
だって、まだお股ベチョベチョだよ?
それに服だって拭きたいし…
なのに、空っぽなんて…
「困る〜」
僕は空っぽになったティッシュの箱をひっくり返したり、振ってみたり…
でもそんなことしたってティッシュが湧いて出て来るわけないし、どうしようかと散々考え抜いた末、
「あの…ティッシュ持ってますか?」
風間ポンに頼ることにした。
だって、風間ポンっていかにも真面目そうだし、それに服装だけ見てても、絶対ポケットティッシュとか持ってそうな雰囲気だし…
なのに…
「ごめん…、今切らしちゃってて…」
…ってさ、そんなことある?
偶然にしたって出来過ぎ…だよね?
「あの…、じゃあどうしたら…」
さすがにこのままじゃ気持ち悪いし、乾いちゃったら後々面倒だし…
「そうだね…。あ、丁度そこにコンビニあるから…」
風間ポンが運転席のおじさんの肩を叩き、フロントガラスから前方に見えるコンビニを指さした。
すると僕達を乗せた車は静かにコンビニの駐車場へと入り…
僕が座る側のスライドドアがゆっくりと開いた。
え、どゆ…こと?
首を傾げる僕に、風間ポンはクスッと笑って、
「スカート、直した方が良いんじゃない? 丸見えだよ?」
そう言うと、お財布の中から1000円札を一枚ピッと出し、超格好付けた仕草で僕に差し出した。
な、なにごと…?
「ごめんね? 買って来てくれる?」
「え、え、だ、誰が? まさか…」
僕…?