第16章 日常7:眠れない僕と寝相の悪い彼
僕はスマホに向かって大きな溜息を一つを落とすと、
『相葉さん…ですよね?』
と入力してから、送信ボタンを押した。
すると、またしても数秒も経たずに“既読”の二文字が表示され…
『バレた?(笑)』と、NINOによく似た小悪魔キャラのスタンプと共に送られて来て…
やっぱりだよ。
だって和なら、いきなり“シタ?”なんて絶対に聞いて来ないもん。
それに、和がそんなすぐに返信をしてくるとも思えないしね?
だいたい、何よりもゲームが大事な和が、いくら相手が僕だからと言って、ゲームの手を止めてまでスマホに手を伸ばすことはないだろうからさ…
僕はもう一度スマホに向かって溜息を落とすと、
『また明日連絡します』とだけ返して、HIME専用スマホの電源を落とした。
本当は長瀬さんからのメールの確認もしたかったけど、今はHIMEに関すること…例えばそれがお仕事のお話だったとしても、考えたくない。
多分、僕は嫉妬してるんだと思う、HIMEに…
「は〜あ…、いっその事“僕がHIMEだよ!”って言っちゃおうかな…」
そしたらこんなモヤモヤもしないだろうし、何よりももう一人の自分でもあるHIMEに嫉妬しなくて済むもん。
きっと今よりも、気持ちはうーんと楽になるもん。
「でもなぁ…」
僕がHIMEだって知った瞬間、櫻井くんに嫌われるのも怖いし…
「もう…どうしたら良いんだろ、僕…」
僕はゆっくり腰を上げると、すっかり冷たくなってしまったお尻を一撫でしてから、足音や物音を立てないように、HIME専用スマホをリュックに仕舞い、押し入れの襖を閉めた。
その間も櫻井くんは気持ち良さそうに寝息を立てていて…
きっとHIMEの夢でも見てるんだろうね?
閉じた瞼の目尻を、デレーッと下げたりするからムカついちゃう。
だって僕のお布団だよ?
なのに僕がこんなにも眠れなくて困ってるのに、櫻井くんばっかズルいよ…