第16章 日常7:眠れない僕と寝相の悪い彼
「ふぅ〜、さっぱりした♪」
ちょっぴり酷い目に合っちゃったけど、やっぱりシャワーは気持ちが良い。
僕は濡れた髪もそのままに、Tシャツとハーフパンツだけを身に着けた。
いつもなら、お風呂上がりはパンツだけって決めてるんだけど、櫻井くんがいるからそうもいかないしね?
僕は髪の先からポタポタと雫を落としながら、一人暮らしにはピッタリサイズの冷蔵庫を開けた。
お風呂上がりはやっぱり…っ、あれ?
おかしいなぁ…、さっき見た時は確かまだ一本残ってた筈なのに…
僕の見間違い?
ううん、そんな筈はない。
ぜーったいあっもん。
あ、もしかして…
僕は冷蔵庫に突っ込んだ頭を出すと、寝室(っと程お洒落でもないけど…)を振り返った。
やっぱり…
僕が楽しみにしていた最後の一本は、櫻井くんの手の中にあって、櫻井くんが残りの量を確かめるためか、耳元で軽く缶を揺らした。
そしてゆっくりとした動きで口元に運ぼうとするのを、
「ちょっと待った〜!」
昔テレビで見た告白番組みたく叫んで止めた。
「それ僕の!」
でも櫻井くんは大して驚いた様子も見せることなく、すっかり軽くなった缶を僕に差し出して来た。
「大野くんもいる? つか、やっぱり風呂上がりのビールは最高だよな♪」
だろうね、だろうね?
お風呂上がりのビールが最高に美味しいってことくらい、僕だって知ってるもん。
だからさ、すーっごく楽しみにしてたのにさ…
酷いよ…
僕は櫻井くんの手から缶を取り上げると、半分も残っていないビールを一気に飲み干した。
勿論、足は肩幅に開き、手は腰に当ててね。
でも…
「物足りない…」
「ごめんごめん、もう少し残しておけば良かった?」
櫻井くんがちょっぴり赤くなった顔で僕を見上げるから、僕も素直に「うん」と頷く。
すると櫻井くんがゆっくり立ち上がって…
「大野くんさ…」
櫻井くんの首に巻き付いていたタオルを、僕の頭にポフッと乗せた。