第15章 日常6:焦る僕と浮かれる彼
「ど、どうぞ…」
階段の下でボケーッと立っている櫻井くんを、手招きで呼ぶ。
「やっとかよ…」
やっとって…、パンティ取り込んだだけだから、そんなに時間かかってない筈なんだけど…
よっぽどお腹が空いてるのかな…
「おっ邪魔しまーす♪」
「すぐ用意するから、狭いし、散らかってるけど、適当に座って?」
「へえ〜、こんな感じなんだ…?」
「そ、そう? 普通じゃない?」
そりゃ多少建物は古いけど、それなりに設備は整ってるし、極一般的な部屋だと思うけど、それもやっぱり櫻井くんみたいなお坊ちゃまから見たら、まるで別世界に映るんだろうな…
「あ、なあ、白飯ある?」
「チンするので良かったらあるけど…」
「じゃあそれも一緒にお願いね」
お願いね…って…
ラーメン屋さんで奢ること思えば、カップラーメンとチンご飯くらい安いもんだけど、ちょっと贅沢じゃない?
しかもこの時間だよ?
僕なんていつもカップラーメン一つでお腹一杯なのに…
太っちゃうよ?
僕はヤカンでお湯を沸かしている間に、パックのご飯を電子レンジに入れた。
「お茶しかないんだけど、良いよね?」
「いいけど…、酒はないの?」
「ビールならあるけど…」
「お、マジで? ちゃんと冷えてる?」
「うん、まあ…」
毎日飲むってわけではないけど、一応ビールだけは切らすことなく冷蔵庫にストックはしてあるけど、まさかと思うけど…
そんな筈…
「そう言えばさ、この間家に来てくれた時、俺が貸して上げた服、まだ返して貰ってなかったよね?」
「え、う、うん…」
「じゃあ着替えの心配はないか♪」
あるわけ?
「え、え、えと、それはどうゆう…」
意味ですか?、って聞こうとしたところで、コンロにかけてあったヤカンが、魔法のランプみたく、口からモクモクと白い煙…じゃなくて、湯気を吹き出した。
そして、タイミングを同じくして、ご飯をチンしていた電子レンジがチーンと鳴った。
まるで僕の気持ちみたく、チーン…とね…