第15章 日常6:焦る僕と浮かれる彼
熱々のラーメンを、ちっちゃなテーブルを挟んで、櫻井くんとハフハフ言いながら食べる。
櫻井くんはしっかりご飯も食べて、ビールまで飲んでるけど、僕はとてもそんな気分になれなくて…
「あのさ、さっき着替えがどうとか言ってたけど…」
「ん? ああ、泊めて貰おうと思ってさ…」
やっぱりそうなんだ…
「で、でも、お布団無いよ?」
敷く場所だって無いし…
「俺別に気にしないけど? 第一、俺らもう既に“一夜を共にした仲”じゃん?」
言い方!
それ、他人が聞いたら絶対誤解されるから!
「っつーことで、飯食ったらシャワーだけ貸してくれよな♪」
はあ…、もうこれ絶対逃げらんないよね…って、僕ん家だし、僕が逃げる必要ないんだけどさ…
僕は部屋の中をグルっと見回すと、櫻井くんに見られたらマズい物が無いか、もう一度確認した。
だって、僕の悪い予感て、かなりの高確率で当たるんだもん。
その僕の目の前で、
「ふぅ〜、食った食った♪」
ポコんと出たお腹を摩りながら、櫻井くんがゴローンと畳の上に寝転がった。
もぉ…、食べてすぐ寝たらウシさんになっちゃうんだよ?
頭良いくせに、そんなことも知らないの?
ま、ウシさんみたくなった櫻井くんも、僕は嫌いじゃないけどね♡
「先シャワー浴びて来たら? 着替え、用意しとくから」
「うん、そうすっかな…」
櫻井くんが、せっかくゴロンとさせて身体を起こし、大欠伸を一つする。
「シャンプーとか、適当に使って良いから…」
「じゃ、お言葉に甘えて」
どっこいしょ、と掛け声をかけて、櫻井くんがお腹を摩りながら、お風呂場へと向かう。
なんだろ…、本当の恋人同士だったら、
「一緒に入ろ?」なんて言うんだろうけど、僕達の関係はまだそこまでじゃない。
それでも、なんだかちょっぴり恥ずかしい♡
…って、照れてる場合じゃない!
僕、見つけちゃったんだ。
テレビボードの端っこに無造作に置かれた、“HIME専用スマホ”の存在にね。
僕は急いで電源お落とし、押し入れに押し込んだリュックの中に突っ込んだ。
『焦る僕と浮かれる彼』ー完ー