第15章 日常6:焦る僕と浮かれる彼
…って、浮かれたのも束の間。
ツイてない時ってのはとことんツイてないみたいで…
「何で?」
キッチリ下まで降りたシャッターを前に、愕然として立ち尽くす僕。
何度も目を擦ってみたり、瞬きを繰り返してみたりするけど、“閉店”の二文字が“営業中”の三文字に変わることはなくて…
「一週間前にはちゃんとやってたのに、いきなり閉店て…」
僕何にも聞いてなーい!
ってゆうか、閉店するならするで、ちゃんと連絡くれないと…って、連絡先の交換もしたことないけどさ…
「なんか…ごめんね?」
僕が謝ると、櫻井くんはちょっとだけ笑って「仕方ないよ」って言ってくれるけど、二度も助けて貰ったのに、何のお礼も出来ないのが申し訳なくて…
「別のお店行く?」
せっかくここまで着いて来て貰ったし、このまま追い返すみたくなるのは、僕的にもちょっと…ね?
「うーん、でもなぁ…」
櫻井くんは辺りをグルーッと見回すと、
「この辺何もなくない?」
キリーッとした眉毛を思いっきり下げた。
確かに、この辺りには閉店してしまったラーメン屋さん以外に、飲食歓迎のお店は一軒もない。
「どう…する? お腹、空いてるよね?」
「まあね…」
櫻井くんはそう言ったきり、腕組みをしてウーン…と考え込んでしまう。
そうなると僕はどうして良いのか分からず…
“閉店”の張り紙がされたシャッターを、ただただ恨みがましく見つめた。
すると、
「そうだ、良い事思い付いた♪」
櫻井くんが組んでいた両手を解き、困り顔だった顔を満面の笑みに変えて、両手でを僕の肩をガシッと掴んだ。
どうしてだろ…
いやーな予感がするんだけど…、気のせい?
「なあ、大野くんのアパートって、ここからすぐなんだよな?」
「う、うん…、そう…だけど…?」
うっ…、この展開ってまさか?
「じゃあさ、大野くんが何か食わせてよ?」
ほらぁ…、嫌な予感って絶対当たるんだよ…