第15章 日常6:焦る僕と浮かれる彼
…って感心してる場合じゃない!
「ね、ねぇ、ここどこ?」
櫻井くんに引っ張られるまま走って来たから、ここがどこだか全く分からない。
「えっと…、それは…、俺も分からない」
ええ〜っ?
ってことはさ、僕達…
「迷子になっちゃった、ってこと?」
「まあ、簡単に言えばそういうこと…かな」
うっそ〜ん…
こんな時間に、こんなどこだか分かんない場所で、僕達これからどうすれば良いの?
辺りを見回して見ても、街灯がポツポツあるだけで、お店の看板一つない。
僕は急に不安になって、櫻井くんの顔を見つめるけど…
「だ、だ、だ、大丈夫! 何とかなる…っつーか、する!」
櫻井くんの方が、一応笑ってはいるけど、僕よりもうーんと不安そうな顔をしていて…
僕はガックリと肩を…
落とさないんだな、これが(笑)
「僕思うんだけど、さっきの場所からここまで、そんなに離れてないよね?」
「ま、まあな…。ただ、けっこう走ったから、それなりには…」
「そっか…。で、でも、多分…なんだけど、僕のアパートからそんなに離れてないと思うんだ」
「そう…なのか?」
自信は…あんまりないけど、多分そうだと思う。
僕はスマホを取り出そうと、リュックを下ろそうとした…けど、
「あ、あの…、手…」
「手が…どうかした?」
いや、だからね?
「手を…、ね…」
「え?」
首を傾げたままの櫻井くんが、僕の顔と手元を交互に見る。
ふふ、櫻井くんだってそんな仕草すると、相当可愛いよ?♡
…って、見蕩れてる場合じゃない。
「手、離してくれないと、リュック下ろせないんだけど…」
そこまで言って漸く、僕達の手がずっと繋がれたままだったと気付いた櫻井くんが、慌てたようにパッと手を離す。
「ご、ご、ご、ごめん…」
もぉ…、謝んなくたって良いのに…
ってゆうか、櫻井くん耳まで真っ赤になってるよ?