第15章 日常6:焦る僕と浮かれる彼
「ここまで来たらもう大丈夫だな」
櫻井くんが足を止めたのは、僕のアパートから程近い公園で…
僕達はお互い肩を激しく上下させながら、顔を見合わせて笑い、公園のベンチにドサリと腰を下ろした。
「それにしてもアイツ…。思った通りだったな」
櫻井くんが額の汗を拭いながら、フッと息を吐き出す。
「思った通り、って?」
「アイツさ、先週だっけ…、大野くんがバイト休みの日に見せ来てさ、すげーしつこく聞いて来てさ…」
先週の休みって…、確か打ち合わせもあって事務所に行った日のこと…?
「次の大野くんの出勤日教えろとか、家はどこだとか、電話番号教えろとか、とにかくしつこくて…」
「そうだったんだ…?」
そんなこと、僕、全然知らなかったよ。
「勿論、教えてないぜ?」
「うん…」
分かってる。
だって、見た目はすっごく軽い男の子に見えるけど、実は櫻井くんて凄く真面目だって、僕知ってるから…
「え、じゃあ、もしかして櫻井くん…、こうなること分かってて一緒に帰ろうって言ってくれたの?」
「まあね…。あ、でも自信はなかったんだよ? でもさ、今日のアイツの様子見て確信したっつーかさ…。ヤバいかな…って思ってさ…」
そうだったんだ…?
「ありがと…ね?」
「べ、別に礼を言われる程のことじゃ…」
「ううん。だって僕一人だったらどうなってたか…」
一度鳴らずも二度までも助けてくれたんだもん。
ホント、櫻井くんて白馬に乗った王子様みたいだ♪
「さっきだって、凄いキックだったし…」
「え、俺? 俺じゃないけど?」
へ、どゆこと?
「あれ、大野くんのキックだぜ?」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕!?」
「覚えてないの?」
「う、うん…」
だって必死だったし、無我夢中だったんだもん、僕…
だからてっきり櫻井くんのキックが命中したんだとばかり思ってたけど…、まさか僕の足がニキビくんのお股を直撃するなんて…
僕ってば凄くな〜い?♪