第15章 日常6:焦る僕と浮かれる彼
僕は櫻井くんの手からHIMEのDVDを取り上げると、僕が持っていたDVDと二つ、横に並べて見せた。
「どっちに興奮する?」
僕が聞くと、
「決まってんだろ、そりゃ…」
櫻井くんは迷うことなくHIMEのDVDを指さした。
「じゃあ…さ、もし…もしも、だよ? 顔は“僕”で、身体は“HIME”だったら? それでも櫻井くんは、同じように興奮する?」
自分でもとんでもないことを言ってるって、頭ではちゃんと分かってるのに、もう止めらんなくて…
「僕のこと抱けるの?」
言っちゃってから、顔が真っ赤になるのを感じた。
そして櫻井くんも…
「えっ?」と言ったきり、石…いや岩のように固まっちゃって…
多分、気まずくなっちゃったんだろうね?
「お、俺、向こう片付けて来るわ…」
空になったカゴを手に、まるで逃げるようにして黒い暖簾を潜り、一般向けのDVDが並ぶ棚の中へと消えて行った。
その後ろ姿を見ながら僕は、なんとなーくだけど確信した。
櫻井くんは自分で気付いてないだけで、本当は“男の子”もイける人なんだ、って。
相葉さんと同じ“バイ”なんだ、って。
だって櫻井くんの動揺っぷりったら…(笑)
手と足、同じ方出ちゃってるし、ロボットみたくなってるんだもん。
ってゆうか、櫻井くん分かりやす過ぎ(笑)
僕は一人クスリと笑うと、手にしていたDVDを二枚、元あった場所に戻し、スキップしたくなる気持ちを押さえ込み、黒い暖簾を潜った。
すると、先に暖簾を潜った筈の櫻井くんがそこに立っていて…
「うわ、びっくりした…」
思わずひっくり返りそうになるのを、両足とちょっと短いけど、真ん中の足で踏ん張った。
「あのさ…、さっきの質問なんだけど…」
「うん…」
どの質問だっけ…?
いっぱい質問し過ぎて分かんないや…
「試してみないと分かんねぇ…っつーか…、試してみる?」
「え…?」
試す…って、何を?