第15章 日常6:焦る僕と浮かれる彼
「貸して?」
店長に怒られ、シュンとする僕の手から、櫻井くんがカゴの取っ手を取り上げる。
そして代わりのカゴを僕に差し出すと、
「とりあえず片付けちまおうぜ?」
取っ手の取れたカゴは隅に置き、僕の足元に散乱したDVDを一枚一枚、ケースの破損がないか確認しながら、カゴの中に詰めて行った。
僕はその姿をただ見ていることしか出来なくて…
「ごめん…」
一応謝ってはみたけど、でも元はと言えば櫻井くんのせいなんだから、僕は悪くないもん。
…なんて言い訳が通じる筈もなく…
「これから忙しい時間帯になるんだから、さっさと棚並べて来い」
店長にジロリと睨まれて、
「…はい」
僕はまたシュンとしてしまう。
だって僕、今まで店長に怒られたことなかったもん。
だからさ…
「行こうぜ?」
落ち込む僕の腕を、櫻井くんが引っ張った。
「うん…」
僕はレジに並ぶお客さんにペコリと頭を下げカウンターを出ると、櫻井くんに引き摺られるように店の奥…の更に奥、黒字にショッキングピンクの文字が眩しい暖簾の奥へと入った。
「なんか…ごめんね? 櫻井くんまで怒られちゃったみたいになっちゃって…」
元はと言えば櫻井くんが悪いんだけどね?(←しつこい!)
「別に気にしてないよ。それよりさ、これ見ろよ」
そう言って櫻井くんが僕の目の前に差し出して来たのは、
「やっぱ可愛いよな…」
僕…ってゆうか、“HIME”のDVDで…
しかもパッケージの裏面…、そうHIMEがお股おっ広げで、おっぱいと息子くんに手を添えた画像(←勿論ぼかし加工有り)で…
目を♡にする櫻井くんの隣で、僕は思わずギョッとしてしまう。
でもHIMEのことしか見えていない櫻井くんは、
「こんな可愛い“娘”にさ、目の前でアンアン言われちゃったらさ、マジで堪んねぇよな…」
やっぱり目を♡にしてる。
その、アンアン言ってた可愛い“娘”は、この“僕”なんですけどね?