第14章 日常5:素顔の僕とお姉ちゃん(?)
相葉さんの淹れてくれたコーヒーを、フーフーしながら口に含む。
あ、美味しい…、けどちょっと苦いかも…
「じゃあ…さ、智が言うように、その”櫻井くん”ってのが、HIMEの正体に気付いてないとして…」
智はどうしたいの?
って聞かれて、僕は一瞬困ってしまう。
「分かんないよ…」
一応返事はしてみるけど、いきなり(でもないけど…)”どうしたい”なんて聞かれたって、はっきりとした…明確な答えなんて、今の僕には出せそうにもないんだもん。
ただでさえ出来損ないなのに、頭だって混乱してるしさ…
「分かんないって…、でも付き合いたいとか思わないの?」
「そ、それは…」
出来る事なら、って思わなくもないけどさ、そんな簡単なことでもない。
「櫻井くん…ノンケだもん。無理だよ」
現実的に考えて、根っからのゲイである僕と、ノンケである櫻井くんが付き合うとか…可能性としてはうーんと低いもん。
だから、仮に僕が告白したとしても、あっさり”ムリ”って言われて、木っ端微塵になるのが落ちだもん。
そんな人を今まで何人も見てきたし、実際僕も経験してるし…
フラれるの覚悟で告白して、櫻井くんに嫌われたくない。
「でもノンケだから絶対無理ってことはないんじゃないかな?」
モスグリーンのマグカップを手にした相葉さんが、和とは反対…僕を間に挟むようにソファに腰を下ろした。
「確かにさ、ハードルは低くないかもしんないけどさ、全く可能性がないわけじゃないと思うんだけどな…」
「そうだよ、実際雅紀だって、ねぇ?」
僕を間に、二人が頷き合う。
「えと…、もしかして相葉さんて…?」
ノンケなの?って聞こうとした僕に、相葉さんが大袈裟なくらいに首を振る。
どゆこと…?
「俺はノンケって言うより、どっちもイケるっていうかさ…」
「バイ…ってこと?」
「一言で言えばそうかな」
ええっ…、僕てっきり相葉さんは正真正銘のゲイだとばかり…
なんかちょっと意外だったかも…