第14章 日常5:素顔の僕とお姉ちゃん(?)
「その“彼”って、本当に智が“HIME”だって気付いてないの?」
え?
どゆ…こと?
「だって考えてもごらんよ。バイト先でもほぼ毎日くらい顔合わせてんでしょ?」
「…うん、まあ…」
毎日とまではいかないけど、週に何度かは同じ時間になるし、顔を合わせる機会は確かに少なくはない。
「だったら普通気付かない?」
「気付く…って、何に?」
首を傾げた僕に、和(←ちょっと慣れてきた♪)が猫背を更に丸くして、息を大きく吐き出した。
「だからさ、智が“HIME”だってことにだよ」
えっと…、つまり…
「“HIME”が“僕”だってこと…に、ってこと?」
“そう!”と言わんばかりに、NINO…じゃなくて和(←動揺したらしい…)が大きく頷く。
え、でもちょっと待って?
「僕、櫻井くんには一度も、僕が“HIME”だって言ったことは…」
寧ろ、櫻井くんには勿論、他の人にだって気付かれないように気を付けて来たつもりだし…
だから櫻井くんがHIMEの正体に気付くことは、多分…ってゆうか絶対ない筈。
「でもさ、雅紀は分かったんだよね?」
和が食後のコーヒーを用意してくれてる相葉さんを振り返る。
「そうだね。俺は一目見た瞬間に、君がHIMEちゃんだって気付いたけどね」
そう言えば…
目印になりそうな建物は伝えたけど、僕が何着てるか…とか、目立った人混みこそなかったけど、一切伝えてないのにも関わらず、相葉さんは迷うことなく僕に声をかけて来た。
「…ってことはやっぱり、その…櫻井くんだっけ? 彼も気付いてんじゃないの?」
そ、そんなぁ…
「で、で、でも…」
ダメだ…、なんか僕泣いちゃいそうだよ…
僕、完全に動揺してる…
「勿論、あくまで“可能性”だけどね?」
「そうそう、俺はたまたま気付いたけどさ、皆が皆そうじゃないと思うからさ…」
相葉さんがコービーをテーブルに置いて、和がティッシュで僕の頬を拭いてくれるけど…
僕まだ泣いてないよ?