第14章 日常5:素顔の僕とお姉ちゃん(?)
相葉さんの「びっくりしないでね」の意味が分かったのは、玄関から真っ直ぐに伸びた廊下の先、リビングのドアを開けてからだった。
「連れて来たよ」
先にリビングに入った相葉さんが、大型テレビの前にある猫背の肩を叩いた。
お客さん…ってゆうか、相葉さんのお友達なんだと思った。
だって、
「かーず、HIMEちゃん連れて来たよ?」
僕、“かず”なんて人知らないし…
ついでに言えば、
「思ったより早かったじゃん(笑)」
ヘッドホンを外して振り向いた顔は、全く見覚えのない顔で…
もしかして僕、相葉さんに騙された?
一瞬悪い予感が脳裏を過ぎる。
「あ、あの…、やっぱり僕帰りま…」
「HIMEちゃん、私よ? NINOよ? 分からない?」
「し、知りませんから」
とにかく、一刻も早くその場から立ち去ることしか考えていなかった僕は、
「酷いな…、私のこと忘れちゃうなんて…」
徐々に距離を詰めて来る声に背中を震わせた。
そして後ろから肩をトンと叩かれた瞬間、
「ひ、ひぃーーーーっ!」
その場に尻もちもつく格好でひっくり返った。
いてててて…
ただでさえ昨日松本さんに散々なこと(←気持ちよかったけどね♡)されたせいで、腰が悲鳴上げてるのに…
僕は涙目になりながらも、恐る恐る後ろを振り返った。
するとそこには、僕を心配そうに見下ろす相葉さんと、薄らと無精髭を生やした色白の男の子が、クスクスと肩を揺らしていて…
「あ…、もしかして…」
え、でも僕が知ってるのは、そこら辺にいるお姉さんよりも、うーんと美人で…
こんな見るからに野暮ったい男の子(僕も人のこと言えないけど…)じゃなくて…
でも…、そう…だよね?
僕のこと、“HIMEちゃん”て呼んだ声には、確かに聞き覚えがある。
「えと…、NI…NO…?」
「くくく、そうよ、私よ?」
「アハ…、アハハハハ…」
引き攣った笑いを浮かべる僕を、わざわざ目線の高さを合わせたその顔は…
かなりギャップがあるけど、やっぱりNINOのだった。