第13章 scene3:待合室
言われるまま、スカートの裾を摘んで捲り上げる。
両足は勿論、HIMEらしく内股で、軽く握った手は顎にちょこんと当てる。
鏡があるわけじゃないから、ちょっと自信ないけど…、でも絶対可愛い筈!
だってHIMEだもん♪
…って思ってたのにさ…
「あー、ダメダメ!」
松岡さんが、大袈裟過ぎるオーバーアクションで両手を広げると、
「そんなんじゃダメだ! もっと君の中のエロスを全身で表現するんだ!」
飛沫が飛ぶ程の大きな声で捲し立てた。
それには流石の僕も困惑を隠し切れなくて…
「あの…、どうしたら…」
やっぱり縋るように松本さんを見上げた。
でも松本さんは一つ深いため息を落とすと、
「俺にも分からん…」
そう言ったまま、首を横に振った。
「そんなぁ…」
僕は松本さんにも見捨てられた気分になって、シュンと肩を落とした。
すると松岡さんは僕の両肩をガシッと掴んで、
「いいか、俺が求めているのが何か分かるか?」
長身の身体を屈めるようにして、僕の顔を覗き込んだ。
ってゆーか、そんな馬鹿力で掴んだら痛いじゃん…
「んと…、エロ…ス…?」
「そうだ、エロスだ。君にはその“エロス”が足りないんだ」
「エロスが…足りない?」
良く分かんないけど…、僕は“エロくない”ってこと…なんだよ…ね?
それはさ、自分でも薄々分かってたよ?
僕は確かに可愛いけど、“色気”ってことでは、やっぱり足りてないとこ…あると思うもん。
でもさ、それを“エロス”が足りないとかさ…
普通言う?
こんな僕でも傷付いちゃうんだからね?
僕は泣きたくなる気持ち(いや、泣かないけどね?)をグッと堪えて、上目遣いで松岡さんを見上げた。
すると…
「そ、そ、そ、そんな顔したって無駄なんだからな?」
松岡さんの顔が、リンゴみたく真っ赤になった。
なーんだ、エロスが足りないとかどーとか言ってるけど、結局僕のこと可愛いと思ってんじゃん(笑)