第13章 scene3:待合室
「お待たせしましたぁ♪」
僕が言うと、その場にいたスタッフ全員が目尻をダラ〜ンと下げる。
ふふ、みんなHIMEの魅力にイチコロなのね(笑)
もっとも…、HIMEの正体が、とんでもなく冴えない“男の子”だって知ったら…、態度は一変するんだろうけどね?
あ、でも“智”だって、普通の…その辺にいる男子に比べたら、随分可愛い顔してるとは思うけどね?
…って、自分で言っててちょっと恥ずかしい…
「よ〜し、始めっぞー」
松岡監督さんの号令で、僕と松本さんは予め指示された場所に立った。
すかさずスタッフさんが僕の手にクリップボードを差し出し、僕はそれを受け取ると、両手でキュッと胸に抱いた。
ふふ、本物のナースに見えるかしら♪
あ、でも変ね?
「あの…、松岡監督さんがスチールの撮影も?」
僕は隣で両腕を組み、斜に構える松本さんを見上げた。
「いや、違うよ」
「え、でも…」
それらしき人の姿は、スタジオ内を見回してみても、どこにも見当たらなくて…
僕はクリップボードを胸に抱いたまま、頭に?マークを浮かべ首を傾げた。
その時…
「来た。あの人がそうだよ」
松本さんが僕に耳打ちをして、スタジオの入口に向かって顎をしゃくった。
「あの…人が…?」
え、だって…全然カメラマンっぽくないってゆーか…
どちらかと言うと…スポーツマン的な…
スタジオ内は空調が効いてるから、それ程寒さは感じないし、寧ろライトとかで熱いくらいだけど、それにしたって半袖のポロシャツに、モッコリさんを強調するようなピタピタの半ズボンは…変じゃない?
でもその手に握られてるのは、ガッツリプロ仕様のカメラで…
松本さんの言う通り、本物のカメラマンさんだって分かる。
へえ…、あの人が…
ふーん…
なんだ…、どっかのテニスプレイヤーが紛れ込んで来ちゃったのかと思ったよ(笑)