第13章 scene3:待合室
スタッフさんに促されるまま、診察室からすっかり待合室へと様子を変えたスタジオセットに入った。
でも…
「あ、ちょっと待ってて?」
忘れてたわけじゃないけど、僕ってば今ノーパンじゃん!
僕は履き慣れないナースシューズで長瀬さんの元へ駆け寄ると、いつの間にか長瀬さんの背中に背負われていたリュックを覗き込んだ。
「えっと…、あれ? 確かここに…。あ、あった…」
僕はリュックの中から、撮影に入る直前に脱いだバイオレットのパンティを引っ張り出すと、長瀬さんの背中に隠れるようにしてこっそり穿いた。
ふふ、こんなちっちゃなパンティだけど、やっぱりあるのと無いのとでは、全然安心感が違うのね?
あ、そうだ…
「あのぉ、ついでにメイクも直しちゃって良いですかぁ?」
汗もかいてるし、松本さんにペロペロもされたし、僕もペロペロしたし…
きっと崩れちゃってるもん。
僕はお菓子やら飲み物やらが並んだテーブルにメイクボックスを開くと、セットを組んだスタジオから漏れる明かりだけを頼りに、手際良くメイクを直し始めた。
剥げてしまったファンデーションを若干厚めに塗り、ピンクのチークで頬を飾って、ついでにアイメイクも直して、ヌーディカラーのリップを塗って…
「ん、完璧よ♡」
鏡の中の自分にウィンクをしてから、メイクボックスの蓋を閉めた。
そして近くにいた女性スタッフさんを呼び止めると、髪をアップスタイルにして貰うよう頼んだ。
お顔だけじゃなくて、髪だって完璧じゃないとね♪
「どう、これで良いかしら?」
渡された手鏡で、何度も角度を変えながらチェックをする。
うん、やっぱりアップスタイルってセクシーよね♡
あとは憧れのナースキャップを被ったら…
「ふふ、可愛い♡」
僕は女性スタッフにお礼を言うと、待合室風に組まれたセットの壁に凭れ、スタッフと談笑する松本さんに駆け寄った。
ってゆーか、松本さんたら…やっぱり白衣の下には何も着けていないのね(笑)