第12章 scene3:診察室
「どうする? 一旦休憩にすっか?」
松岡監督さんが松本さんに言う。
でも松本さんは首を横に振ると、
「次の仕事も入ってるし…このまま続けよう」
そっか…
松本さんくらい有名で人気の男優さんともなると、一日に何本も掛け持ちしたりするって聞いたことあるし…
迷惑かけるわけにはいかないよね?
… ってゆーか、僕が悪い訳じゃないけどね?
悪いのは松岡監督さんだもん。
「あの…、HIME…頑張るので、このままお願いします」
さすがにこの体勢でずっといるのは辛いし、何よりも前も…後ろも早く解放して欲しい。
「くくく、その言葉忘れないでくれよ?」
「…はい」
HIMEに二言はないわ。
「それに…、俺の可愛い従兄弟をガッカリさせるなよ?」
「あっ…」
夢中になっててすっかり忘れてたけど…
スタジオの片隅にはお友達の櫻井くんが、固唾を飲んで撮影を見守っているのよ…ね?
櫻井くん…、僕のこんな姿を見てどう思ったかしら…
興奮…してる?
それともガッカリは…、してないみたいね?
だって櫻井くんのお股…、遠目で見ても分かるくらい、膨らんでるもの…
でもそれって“HIME”だから…よね?
もし“HIME”の正体が“僕”だって知ってたら…、きっとそうはなってないわよね?
はあ…、HIME…なんだか複雑よ?
なんて考え事をしていると、数人のスタッフさんが僕のお股の間に集まって、何やらコソコソ話を始めていて…
「あの…」
僕が言うと、スタッフさんの一人が宙に浮いたお尻に手を伸ばした。
そして紐状になったパンティ(しつこいようだけど、貞操帯ね)の後ろを引っ張った。
「え、ちょっと…?」
「あ、すいません、鍵外すように言われて…」
あ、なんだ…、そうなのね?
良かった…、僕…、スタッフさん達に手篭めにされるのかと思っちゃった(笑)
ほら、たまーにあるからさ…、台本にない…サプライズ的なことがさ(笑)