第12章 scene3:診察室
「どうですか?」
僕の手に手鏡が渡される。
「わあ…」
僕は、鏡に映った自分の姿に、思わず溜息にも似た声を漏らした。
だって、アップスタイルって、ちょっぴり“大人”な感じだし、僕には似合わないと思ってたんだもん。
なのに鏡に映った僕は、可愛さの中にちょっぴり大人っぽさも兼ね備えてて、自分で言うのもなんだけど…すっごく素敵で…
更にそこに憧れのナースキャップなんて被せられちゃったら、もお…♡
「うわぁ、ね、ね、HIME本物のナースみたいよ? 素敵だわ♡」
顔の角度を何度も変え、手鏡に映る自分の姿に興奮を隠せない僕は、飛び上がる勢いで診察台から降りると、ボケーッと立っていた城島さんからリュックを受け取り、HIME専用スマホを取り出した。
「ね、撮って?」
スマホを女性スタッフに渡し、診察室を模したセットをバックにポーズを取る僕。
やっぱり“ソレ”の存在を忘れてる気がするけど、もう関係ない。
だって、こんな可愛い僕は今しかないんだもん。
何がなんでも残しておかなくっちゃね♪
「ね、可愛く撮れた?」
「はい、とっても」
「見せて?」
女性スタッフからスマホを受け取り、撮ったばかりの写真を覗き込む…けど、
「スマホだかオナホだか知らねぇが、そいつぁ後回しだ」
僕の手から松岡監督さんがスマホを取り上げた。
ってゆーか、“オナホ”って…、スマホだしね?
せっかく盛り上がってたのに、テンションダダ下がりだよ…
僕は渋々ヘンテコな形の診察台の上に座ると、松岡監督さんには見えないように、こっそり唇を尖らせた。
その時…
ウィーンと奇妙な機械音がして、背もたれがゆっくり後ろへと傾き始めた。
え、え、ちょっと…?
僕は慌てて肘掛を掴むと、目をキョロキョロと動かした。
「おい、足固定しとけ」
え、え、ええ…っ!?
スタッフ達が僕の足を掴み、背もたれが傾くと同時に持ち上がったヘンテコな器具(?)の上に乗せ、足首にベルトを巻き付けた。
え、え、えええっ…、ねぇ、何事?