第11章 scene3:病院
そんなこんなでどうにか下半身の疼きを抑え込み、撮影スタジオに着いた頃には、僕はもう息も絶え絶えで…
「降りれるか?」
長瀬さんに聞かれて頷いてはみたものの、異物感が凄くて…
足を動かそうものなら、僕の中で中太ロングサイズの“ソレ”があちこちに擦れて、その度に膝が崩れそうになる。
すっごいガニ股になっちゃうし…
選んだ衣装が超ミニなだけに、ガニ股になると勝手に裾が上がって来ちゃって、お尻が丸出しになってしまうし…
結局僕は長瀬さんの手を借りることにして、普段は車の運転しかしない城島さんが、僕のメイクボックスとリュック、それから予備の衣装や玩具の類いがギッシリ詰まったクリアボックスを運ぶことになった。
体格も立派な長瀬さんに比べ、ヒョロッとしている城島さんだから、大事なメイクボックスを落っことしてしまわないか不安だけだ、今はそんなことを心配してる余裕がない。
だって少しでも気を抜けば、
「あっ…、ん…、ふぁ…っ…」
声が出ちゃうんだもん。
だから、僕の中で“ソレ”が向きを変える度に、僕は足を止め息を整えてから、指定されたスタジオへと足を進めた。
おかげで、通常の倍以上の時間がかかってしまうけど、仕方ないよね?
しかも、こういう時に限って、
「おっ、HIMEちゃんじゃないの? なに、今日は撮影?」
別の作品で撮影に来ていた国分監督さんには捕まっちゃうしで、スタジオはすぐ目の前にあるものの、中々足を前に進めることが出来なくて…
「じゃ、じゃあ、HIMEもう行きますね? 監督さんに怒られちゃうから」
適当な理由を付け、国分監督さんにウインクを一つしてから、足早(…の、つもり)にその場を後にした。
僕の今のこの状況を知らないから仕方ないんだけど、国分監督さんて一旦話さ出すと、やたら長いんだよね…
だから出来れば知らないフリしたかったのに…
なんだかツイてない。
僕はスカートの裾を気にしつつも、思いっきり肩を落としてスタジオの分厚いドアを開いた。