第10章 日常4:彼のベッド
「グー…、グォ…」
は、はあ!?
ちょ、ちょっと待って?
このタイミングで寝るとか…ありなの?
え、僕なんだかんだ超期待してたのに…?
しかもだよ?
「ん〜、HIMEちゃん…ムニャムニャ…」って…
まさか僕、HIMEの抱き枕と勘違いされてる?
そりゃさ、僕は正真正銘“HIME”だけどさ、それにしたって抱き枕なんかと間違えられるってさ、ちょっと酷くない?
僕は腰に巻き付いた腕が少し緩んだのをキッカケに、櫻井くんの腕から抜け出すと、静かに部屋を出てトイレに向かった。
ずっと我慢してたから、そろそろ限界だったんだよね。
色んな意味で…ね?
だからかな…、ポカポカの便座に座った瞬間何とも言えない開放感に襲われて…
「ふ〜」
と息を長く吐き出すと同時に、背中をブルッと震わせた。
さっきまで櫻井くんの体温に包まれて汗をかいていたせいか、お尻はポカポカで暖かいんだけど、流石に半袖Tシャツ一枚では寒い。
何か羽織って来れば良かった…
僕はちょっぴり後悔しながらトイレを後にすると、足元を照らす照明を頼りに廊下をペタペタと歩き、櫻井くんの部屋へと戻った。
なんか…、すっかり目が覚めちゃったな…
僕は、丁度部屋の中央に置かれた二人がけのソファに腰を下ろすと、リュックの中を漁り、小さくてくたびれたポーチを取り出した。
ポーチの中には、HIME専用スマホが入っていて…
家にいる時以外は切っている電源を入れ、暫く待っていると、スマホが立ち上がると同時に、次々と表示される通知の数々に僕は驚く。
だって、HIMEの番号を知ってるのは、長瀬さんを始めとして限られた人ばかりで…
その長瀬さんも、特別な用がある時にしかメールも電話もして来ないのに…
なんで?