第10章 日常4:彼のベッド
「櫻井…くん…?」
初めて目にする自分のあられも無い姿に動揺しつつも、心做しか揺れている櫻井くんの背中に声をかけてみる。
…けど、余程DVDに夢中になっているのか、右手は忙しなく動いているようだけど、それ以外に櫻井くんからの反応はない。
だったら…
僕は開けたばかりのドアをそっと閉め、息を整えるように深呼吸をした。
そしてギュッと右手を拳に握ると、スーッと息を吸い込み、ドアを叩こう…としたけど途中で止めた。
もし今ドアを開けて、櫻井くんがラストスパートの最中だったら…
申し訳ない…じゃん?
僕は廊下の壁に背中を預けると、膝を抱えた格好で廊下の床に腰を下ろした。
床暖房完備なのか、廊下の床は冷たくはないけど、それでもやっぱり寒い。
せっかく温まった身体が冷えてしまうけど、仕方ないよね?
だって今櫻井くんの部屋に入って行っても、きっとお互い気まずい思いするだけだもん。
そりゃさ、仕事柄“そーゆー行為”を目にする機会は多いし、なんな、自分だって…してるよ?
でもさ、やっぱりそれが友達ってなると、ちょっと話が違って来る。
しかも、ちょっと(かなり…かもしれないけど…)気になってる彼の…だったらさ、そんな姿を目にするのは…やっぱり気まずい。
それもさ、僕のDVDをオカズに…ってなるとさ…
はあーあ…、どうしよ…
僕は膝を抱えたまま、床にゴロンと転がった。
あ、あったかい♪
僕はそのまま床をコロコロ転がると、床の上に両手両足を広げ、大の字になった。
そうしていると、背中から床暖房の熱がじんわりと広がって来て…
「ふぁ〜…」
なんだか眠たくなっちゃったな…
僕は欠伸を一つすると、重力に逆らうことなく瞼を閉じた。