第10章 日常4:彼のベッド
ほのかに香る洗剤の匂い…
当然だけど、洗濯済みの物で…
元々、人が身に付けた服とかには偏見もないし、気にしたりもしないけど、流石に下着となると…ね?
僕は隅々までしっかり匂いを嗅いで、一応中も確認してから、漸く赤い迷彩柄パンツを身に着けた。
色も柄も、全く僕の好みではないけど、履き心地は悪くない。
それに…
大事な部分が櫻井くんに包まれてるみたいで…
ちょっと変な気分になりかけたところで、
「ダメダメ!」
他人の家のお風呂でイッちゃっただけじゃ飽き足らず、またイケナイこと想像するなんて…、僕ってば何考えてんの?
僕は両手で頬をパンと叩くと、気を取り直してTシャツとハーフパンツを身に着けた。
若干季節感無いようにも感じるけど、熱いシャワーで火照った身体には丁度良い。
僕は濡れた髪もそのままに、タオルを首に引っかけ洗面所を出た。
途中何度か迷子になりながら、漸く櫻井くんの部屋に辿り着いた僕は、控えめにノックをしてからドアを開いた。
「お風呂、ありがと…。それから着替えも…あり…」
…って、ええっ…!?
ドアを開けると同時に耳に飛び込んで来た声と、目に飛び込んで来た映像に、僕はその場に固まった。
もうそれこそ“岩”のようにね。
「さ、さ、櫻井…くん…?」
僕の部屋にあるのとは、数倍は違うテレビに向かう櫻井くんの背中に声をかけてみるけど、その先の言葉が見つからない。
だって…
櫻井くんが真剣に見てるのは、あろうことか僕のDVDで…
『あ、あん…、先生…、HIMEもう…』
『まだまだイカせないよ?』
『ああっ…、ダメぇ…っ…』
僕は思わず耳を両手で塞ぎ、目をギュッと瞑った。
だって僕…
自分が出演したDVDなんて、見るの初めてなんだもん…