第10章 日常4:彼のベッド
「決まりだな」
テーブルを拭き終えたタオルをシンクに放り込み、櫻井くんが僕の肩に手をかけるから、僕はドキッとしてしまって…
「な、な、な、何…が…?」
咄嗟に身を引こうとしたけど、櫻井くんの力は思った以上に強くて…
結局僕は櫻井くんに肩を抱かれる格好でダイニングから廊下へと出ると、向かいにあったドアを開いた先へと放り込まれ…
「ほれ、良く見てみろ?」
洗面台の前に立たされた僕は、櫻井くんに言われるまま、鏡に映る自分の姿を見つめた。
“ふふ、今日も可愛い♡”…って、HIMEなら言うんだろうけど、生憎今の僕は“HIME”じゃないから、自分の顔を見つめたところで何とも思わない。
それどころか、夜になって薄らと生えてきた髭が気になる。
僕は鏡越しに櫻井くんに首を傾げて見せた。
すると櫻井くんは僕のアソコ(言わなくたって分かるでしょ?)を指で指すと、
「ここ、漏らしたみたいになってんぞ?」
そう言ってプッと吹き出した。
僕はと言えば…
濡れたことは分かっていたけど、まさかそんなことになってるとは、全く思ってなかったからビックリで…
恥ずかしくて…
「ち、違うもん…」
濡れたセーターの裾を目いっぱい引っ張って、濡れたお股を隠した。
なのに櫻井くんてば…
「なあ、下まで行っちゃってんの?」
なんて聞いてくるから、僕は顔を真っ赤にして頷くしかなくて…
「しょうがねぇなぁ…。風呂は無理だけど、シャワーでも浴びとけ」
そう言ってバスルームのドアを開けた。
「着替え、俺の貸してやるから…」
「うん…、ごめん…」
「いいよ、謝んなくて…。それよりさっさとシャワーして来い」
「うん…、ありが…と…」
櫻井くんが出て行き、濡れたセーターを脱いだ僕は、今日何度目かの溜息を落とした。