第10章 日常4:彼のベッド
「ふ〜、食った食った」
自分の分と、僕が残した半分くらいをペロッの平らげた櫻井くんが、ちょっとだけ出たお腹を摩った。
ってゆーか、病気なのにちょっと食べ過ぎじゃない?
まあでも、お腹が空くのは元気な証拠って言うし…、朝からろくに食べてなかったみたいだから、そんなに心配しなくても平気かな(笑)
「大野くん、風呂どうする? 入るなら準備するし…」
「い、いいよ…、そんなに汗もかいてないし…」
それに病人にお風呂の支度までさせるわけにはいかない。
僕はテーブルの上を片付けようと、空になったお皿を重ねた。
そして、僕の部屋を埋め尽くしてしまいそうなテーブルに手を伸ばしたその時、
「あっ…!」
僕の肘がグラスにコツンと当たってしまい…
やばい!
そう思って咄嗟にグラスに手を伸ばすけど、その時にはもう遅くて…
テーブルの上をコロコロと転がったグラスからは、僕が飲み残したジュースはテーブルの上に零れ…
「冷たっ…!」
僕のセーターとジーパンを濡らし、ついでにパンツも濡らした。
「あーあ…」
「ご、ごめん…。すぐ片付けるから…」
僕はべッチョリと濡れたパンツに不快感を感じながらも、タオルを取りにキッチンへと入った。
はあ…、僕ってばどうしてこうなんだろ…
自分のおっちょこちょいっぷりに落ち込み、盛大な溜息を落としながら、タオルでテーブルを拭いていると…
「貸して?」
「い、いいよ…」
「いいから貸せって…」
櫻井くんが僕の手からタオルを奪い、テーブルの上を何とも適当に拭き始めた。
「ごめん…」
「いいよ、気にすんな。それよか…」
櫻井くんがニヤニヤと笑いながら、僕を足の先から頭のてっぺんまで、舐めるように見た。