第3章 意識
唐突な出来事に混乱したが、急いで彼と距離をとるため、手を引き剥がす
「ななっ、な、な!!!どこ触ってんの!?」
「わ、悪い!」
凄い勢いで離れ、俯く。
なぜかわからないけれども、恥ずかしい。こんな、今更なのに、なんで……
普段なら睨みながらボカボカ殴っているが、何故か今は顔も見れない。頭の片隅に追いやっていたあの日の出来事が鮮明に思い出される。
あの時のせいだ。そうに違いない。キバナの馬鹿野郎、と脳内で罵る。
「クゥー……」
「あっ、ごめんねシュウ。大丈夫?」
二人とも無言になり恥ずかしい空気になっていた時、シュウが私を見つめていたので抱き上げる。
白い毛並みを撫で、少し冷静になる。すこしひんやりとしている体温は、今の私を冷やすのに丁度よかった。
シュウごしに彼の姿を盗み見る
「……っ」
彼は私と反対の方を向いていたが、真っ赤になっている耳が見えた。
ああ、もう。なんでそんな反応をするかなぁ……。
再び顔が熱くなり、白い毛並みに顔を埋めたのだった
ーーー
「……ごめん。」
「いいって。私も過剰に反応しちゃったし、支えてくれたんでしょ。ありがと」
彼は眉を下げながら笑った。安心したかのような、なんとも言えない表情だった。
「じゃあそろそろ帰るわ」
「え、夜は?」
「あー……いいや。あんま食欲湧いてねぇし」
そう言って玄関の方に歩みを進める。
キバナが食欲が湧かないなんて珍しい。いつも食べてるのに……
「ふーん……?変なの。まぁいいや、バレないように帰ってね」
特に気にせずに、そのままキバナを見送った。
いい加減来る時連絡して欲しい……いや、そう考えるだけ無駄だな。諦めよう。
ーーー
ふよふよと一人の男の周りに浮かぶスマホロトム。
その男は自身のバンダナを力強く握りしめ、ロトムを一瞥し、顔を手で覆った。
画面には穏やかな笑みを浮かべながらロコンを撫でている人が写っていた