第3章 意識
「珍しいね、いつも休日なんて絶対こないのに」
「あー……そうだっけか」
ソファーに腰掛けている彼の前に飲み物を置きながらそういうと、彼は興味なさげに返事をした。
推測ではあるが、なるべく休日は自分の時間を取らせようとしてくれてたんだろうなーと思う。これも言ったら怒られてしまうだろうから言わないけれども。
一応客人ではある彼に飲み物も出したので、キバナの隣に座る
彼は私を一瞥したあと、飲み物に手を伸ばした。
私はシュウを呼び、膝の上に乗せた。すこしひんやりとしている毛を撫でる。気持ちよさそうに目を細めた様子を見て、つい頬が緩む
「……ふふ」
シュウを見つめていると、不意にパシャ、と隣から聞こえた
私は驚いて音のなった方を見ると、キバナがニヤニヤと嫌な表情をしていた。ああ、この顔は面倒くさいぞ
「おーおー、よく撮れてるな。さすがオレ様のロトムだぜ」
「消して。てかなんで撮ったわけ?」
「オマエが間抜けな顔してるから」
「は〜〜??そりゃ貴方より間抜けで整ってない顔立ちでしょうけど!」
言い合うと、シュウが嫌がって膝から降りてしまった。ああ、ごめんね、と心の中で謝り、隣の奴を睨みつける
「バーカ!こうしてやる!」
いつも通りのふざけ合い。私は彼のトレードマークを奪い取り、ソファー後ろへと回る
まるで子供が鬼ごっこをしているかのように、私とキバナはソファーと机の周りをくるくると周っていた。私の手には相変わらず彼のバンダナが握られていた
「いい加減返せって」
「今までその要件聞いたことある?」
「……オマエほんと可愛くねーな」
その台詞にムカついた私は、少しだけ早歩きになって逃げ出そうとした
その時、シュウが足元をヒュッと通りかかった。
咄嗟のことに、不安定な体制だった私は体がぐらつき、そのまま倒れる……
かと思ったが、それよりも先に後ろから抱きつかれるかのように抑えられ、倒れることは免れた
「……っぶね〜……バカ!オマエ、気を付けろよ。」
「……ご、めん…」
倒れなくてよかった、と安堵し、冷静に今の状態を分析してしまった。
彼の腕は私を支えるため、抱きつく形になっているが、その手は思いっきり私の胸をも掴んでいたのである。
一気に熱が出たかのように、全身が熱くなったように感じた。