第4章 昔の
「…キバナってさ、誰かと付き合わないの?」
「……………は?」
いつも通り、何の連絡もなく唐突に来て、人の家のソファーに寝転がっているキバナにそんな言葉を投げかける。
聞かれた本人は長い間を置いて、は?という言葉を絞り出した。
「いや、ふと思っただけなんだけどね。ジムリになってから一切そういう人居なくなってない?前はまぁ、告られたからみたいなのあった気がするんだけど」
「……いつの話だよ…。しかもそれ一回くらいだっただろ」
「あれ、そうだっけ?……彼女でも彼氏でもどっちでもいーけど、そういう人すぐ作れそーなのに、何で居ないんだろーって」
うん。この外見が嫌な人なんてなかなか居ないはず。
少なくとも昔告白されていたのを私は何回か目撃したことがある
いやー、あれは正直びっくりしたね。前申し込まれてたから、試合でもしようかなとか思って訪ねようとしたら見かけちゃったんだもの。
当時はそういうのはまだまだ先の話とか思ってたからなぁ……。
「……そういうオマエこそどうなんだよ。どーせ色気ねぇからな。いなかっただろ」
「ブッブー ざんねんりき〜。貴方が早々にジムリになってる間に私は別の職場で彼氏を作っていたのでした〜!」
「………はぁ?」
ええ、そこは「ざんねんりき」にツッコミを入れて欲しかった。せっかく考えたのに……なんて下らない期待は捨て、説明に入る。
「一応彼氏はいたんですー。色気なくて悪かったね!それでも彼氏いたから!侮辱やめろ!」
「いててて」
ソファーに寝っ転がっているのをいいことに、私はキバナの鼻を思いっきり引っ張った。鼻高いから大丈夫でしょ。
考えていると、彼は私の手を払い除け鼻をさすりながら少し睨みつけてきた。
「……知らなかった」
「そりゃ言ってないからね。別に関係ないかなーって思ったし、聞かれなかったから。」
当たり前だろう、という表情で返事をすると、彼はいつまで付き合ってたんだ?と聞いてきた。なかなかに踏み込んで聞いてくるな。別にいいけど
「えーと、確か2年弱付き合ってたんじゃない?まぁ、アイツと別れて正解だったなって改めて思うけどね。」
「……?好きで付き合ったんだろ?」
「最初はね。……あー、思い出して腹立ってきた。ちょっと聞いてよ」
私はキバナの正面に座り、あの頃の話を始めた