第2章 画面の君は
声が大きすぎないか、と思うが特に私はなんとも思わないタイプなので聞き流す
「今年はチャンピオンの弟が参加してるみたいだぞ!」
「ああ!えーーっと、名前なんだっけな」
「さぁ?でもどうだろうな。今年こそチャンピオン変わっちまうのかなぁ」
気になる言葉が出てきて、つい聞いてしまった。
チャンピオンの弟……つまり、ダンデさんの弟。
どんな子なのか気になって検索をしてみると開会式の写真が出てきた。
ああ、たしかに似ている。名前は……ホップくんか
……ダンデさんの話はキバナから何度も聞いた。あとは、昔あったことがある程度。まぁ、今はもう彼は私のことは忘れているだろうけれど
キバナからよく「オレ様のライバルはダンデなんだよ。___」長々と聞かされていたなぁ、と思いながら再度話し声を聞いてしまう
「あ!ほら見てみろよ!」
「ん?あ!これ!!開会式の時の写真?もうキバナさんSNSにアップしてあんの?」
「キバナさんのアカウント、たまによくわかんねー画像あるよな」
「あー、砂嵐の写真だろ?」
そういえばそんなのもあったな、とキバナのアカウントを見る。
そこには開会式の登場の際に撮った写真が載っていた。
コメントはカッコいいとかそういう物が多かった。
確かに顔はいいと思う。だけれど、幼馴染だと見飽きたというか、慣れてしまったからな……
画面をどんどんスクロールして過去の写真を遡る。
ふと、画面の中の彼を見て思う
彼は知り合いからだけでなく、こうして知らない一般人の人との話題に持ち上がるほど有名になった
私が思っている以上に、とても
とても遠い存在になってしまっているのじゃ無いか……と
嫌でも考えてしまう。
昔はよく試合をしたり、普通に遊んだりしていたのに、いつの間にか、こんなにも……
ツ、と画面に映る彼を触る。
私は大きくため息をついた後、鞄にスマホロトムをしまった。
何度こんな気持ちになっただろうか。
なかなか素直に喜べていない自分に腹が立つ。
もう何年も経っているのに。
今度はため息ではなく深呼吸をする。こうすることでなんとか冷静にさせる。
まだ仕事は残っているんだ。こんなことに気を取られてちゃいけない。
トレーを片付けて仕事場に向かった