第1章 いつものこと
いつもの時間になったので、他の手持ちのポケモン達を出してご飯をあげた。美味しそうに食べてくれる姿を見ながら、冷蔵庫から新しくお酒を取り出す
キバナが来る日は夕食の時間が早まるからなぁ…
「はー、チャンピオンカップねぇ……。ダンデさん観るの楽しみ!チャンピオン〜!」
「………おい、目の前にいるオレ様のこと応援しろよ」
「えー…?……ダンデさんに10連敗してるキバナを?」
「今年こそオレ様が倒すんだよ!」
ケラケラと笑いながらおつまみに手を出す。
キバナは私が笑っているのが気に入らないのか、私がまだ開けて二口も飲んでいないお酒を奪い取って飲んでしまった
「あーー!!自分で買いなさいよー」
「オマエもう酔ってるからもう飲むのやめろって」
「酔ってないー」
心のどこかでは、今日酔いが回るの早いなーとは思っていた。
お酒の影響なのかあまり考えずにいたので、キバナに言われてからやっぱり酔ってるんだなぁ、とぼんやり思う。
また新たに取り出そうと立ち上がると、前に座っているキバナが頭にチョップをくらわしてきた。
「いたっ!」
「バーカ。もう寝ろ」
「え?……うわ、もうこんな時間?」
時刻を見ると、あと少しで日付が変わってしまいそうだった。
キバナを見ると、既に食器をまとめてキッチンに置いていた。本当に毎回思うけど、サラッとこういうのやるよなぁ……
「ありがと!ごめん、こんな時間になってたとは気づかなかった」
「ま、オレ様も好きでいたわけだからな」
キバナはかけてあった上着を羽織り玄関へ向かったので、見送ろうとついて行く
後ろを歩くと前が一切見えないはもはや慣れてしまった。
もっと小さい頃は私の方が背高かったのなぁ……
玄関に着き、くるりとこちらを向いたキバナを見上げる
「じゃ、お疲れさん。ありがとな」
「うん、気をつけてね。今度こそ連絡してから来てよね!」
……いつもなら
いつもならこれで終わりだった
お酒のせいか、何なのか
彼はスッと手を伸ばしてきて、私の頬にそっと触れ
「あんま飲みすぎんなよ?……あと、今年こそオレ様がチャンピオンになるから。見とけよ」
そう言って扉を開けて帰って行った。
固まって動けなかった
扉が閉まる音が、酷く耳に残った