第1章 いつものこと
夕飯を作り終え、着替えを持って移動しようとする。
「じゃあ私お風呂入ってくるから、先食べたければ食べてて」
「いつも待ってるだろ?」
「冷めるから食べてろって言ってんのに……」
「言うほどオマエ風呂長くねーじゃん」
私はその言葉に返す言葉が無くなってしまった。確かに早い時は10分くらいしかかからないけれども……!!
「シュウのこといじめないでよね」
そう言い残して私は風呂場に向かった
「……いつオレ様がいじめたんだよ」
「コォン?」
ー
リビングに戻ると、おそらくSNSを見ながらソファーで寝そべっているキバナがいた。
まるで我が家のようにくつろいでいたのを見て、また寝そべってるなぁ……なんて感想しか出なくなった。
彼がここに定期的にくるようになってもう一年近くになる
もちろん当初は「ちょっとー、少しは遠慮っていうのがないわけ?」とか言っていたが、慣れとは恐ろしいものだ
「出たよ。食べてな…いね。ほんと頑固だな……。じゃあ食べよ」
「おー」
「飲み物何にする?」
「アレでいい」
私は冷蔵庫から自分のお酒と、サイコソーダを取り出して食卓に置く。
「じゃあいただきます」
「いただきます」
「コォーン」
二人と一匹で共に夕食を食べながら、今日の出来事を話し合う
私はお酒を片手に客が最悪だったという愚痴を垂れた。
「何が嫌って、いちいちケチつけてくるの。しかもその時攻撃対象の私に集中砲火で、ほんとやってられない!」
「そりゃご苦労さんだったな……」
「ありがと。……でもキバナも今の時期大変でしょ。だってもうすぐジムチャレンジの開会式じゃない」
「あー……まぁこの期間だけな。始まったら毎日が楽しみになるからよ」
ニヤリ、といつもとは違う笑顔の彼を見て、ああやっぱり試合好きなんだな、と改めて感じた。
私もTVで見るのが結構楽しみではある。
お酒を飲みながら、ふと去年ダンデさんに挑んで負けていた彼の姿を思い出す。
きっと今も変わらず勝とうと努力を続けているんだろーなぁ。ぱっと見じゃわかんないけど、結構真面目な部分があるし……
チラリと前に座って食べている彼の顔を見る。
「……何だよ」
「んー、味付けどうかなって」
「嘘つけ。さっき聞いてきただろーが」
本当記憶力いいなこいつ……