第8章 File:8
この変わらない無表情を快楽に歪ませたい。どこかにそんな気持ちが芽生えていた。この互いを阻む薄い布すら煩わしい。一旦上体を起こしてTシャツを脱いだ。既に火照った体に冷気が纏わりつく。両手を滑らすように彼女のTシャツも脱がすと暗闇に薄っすらと形を表す双丘にやんわりと手を置いた。ゆっくり感触を味わうように揉みほぐすと、恥じらいからかは顔を背けた。特段息が上がっているわけでもない。互いの顔が見えるのをただ恥じただけだろう。それだけじゃつまらない。双方の頂きをつまみ上げると小さな声が漏れた。これに味をしめたかのように執拗に捻ったり捏ねたりを繰り返す。ビクビクと体が震え始めると片方を口に含んで舌で転がしたり吸い上げたりした。
「あっ…、」
一瞬大きく漏れた声だがそれ以降は聞こえなくなる。視線を胸から顔に移すとは自分の手を噛んで声を堪えていた。
その手をそっと離すともう歯型が残っていた。
「我慢しなくていい。」
「でも…。」
欲情を誘いたくて彼女の耳元に口を寄せた。
「もっと聞きたい、だから我慢しなくていい。」
そのまま耳に舌を這わせるとまだ堪える声が聞こえた。どうにもすぐにリラックスさせるのは難しいらしい。
片手を胸から脚へ滑らせて間に入りショーツの上から中心をなぞった。思いの外渇いていることに焦る。感じない体質なのか、それともやり方が悪いのか。思いながらもショーツをするりと脱がせて脚を開かせ中心に顔を埋めた。
舌で探るように下から上に舐めると生温かい彼女の味がした。更に劣情をそそる匂いに気が狂いそうになる。もっと味わいたくて満遍なく舌を入れた。上からは荒くなっていく呼吸と共に堪えきれなくなった声が聞こえてくる。それに洗脳されていくかのように荒々しく舌を動かすと甘美な体液が溢れ出てきた。少しも零さぬように丁寧に舐めとる頃にはは息を上げて足を震るわせていた。
再び体を起こしてボクサーパンツを脱ぐと窮屈そうにしていたそれが勢いよく現れた。はそれを見たのだろうかと顔を確認するも視線は壁に向けられていて全くこちらを見てはいない。また上に被さると両手で顔を包んで無理やり向かせた。狡噛はなるべく真剣さを意識して見つめるが彼女の瞳はウロウロとどこにも止まらない。
「こっちを見ろ。」
そう言ってやっと目が合った。