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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第8章 File:8


ふと、は端末の電源を落としてそれをソファの前のテーブルへ置いて大きなあくびをした。手で抑えてはいたもののそこからはみ出すくらい大きな口だった。
無防備だな。

「寝るか。」

「はい。」

「俺がこっちで寝るから…」

「狡噛さんは自分のベッドで寝てください。疲れ取らないと明日が大変ですよ。」

「おっさん扱いするな、でも今日は運転続きだったしな。遠慮なく使わせてもらう。」

遠慮なくっていうのも変だなと言ってから思う。
寝る前に二人揃って洗面所兼脱衣所で歯を磨き、磨きながらどんどん瞼を落としていくを鏡越しに眺めては肘で突付いて起こした。
終わる頃には目はいつもの半分しか開かなくなっていた。

「おやすみなさい、狡噛さん。」

「おやすみ、何かあったらいつでも起こしに来な。」

「ありがとうございます。」

狡噛はの頭に手を軽く乗せると彼女はその重みを感じ取るかのように目を瞑った。
その手を名残惜しく離して狡噛は寝室に入った。
ドアの隙間から漏れるリビングの明かりが消える。一日があっという間だった気がする。ベッドに入ると眠りへと体が沈み込んでいくようだった。




狡噛の意識はふいに現実に引き戻される。だが頭がまだ半分覚醒しない。何の拍子に起きたかといえば背後の気配と冷気だ。日々研ぎ澄ました感覚は仕事のためのものだったがまさか自宅にいても働くとは思わなかった。そしてその気配は一つしかない。

「…?」

起きたはものの声は明瞭さに欠ける。喉奥で籠もった眠そうな声しか出なかった。
背後ではもぞもぞと遠慮がちな動きがある。

「ごめんなさい…」

起こさないようになるべく端にいようとしたらしい。ちょっと押せばベッドから落ちそうなほどだった。

「どうした?おいで。」

彼女が動きやすいように掛布を手で上げて空間を作って待つ。背を向けていたは向きを変えてすぐに懐に収まった。外に居た時のように冷たくなった体を震わせている。そういえば毛布を与えるのを忘れていた。狡噛が寝に行った後でもう一度声をかけるのも気が進まなくて我慢したのだろう。可哀相な事をした。
自分より小さい体を覆うように抱きしめて背中や肩を擦って温める。

「起こしてごめんなさい。」

「いいさ、寒かったんだろ。」




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