第7章 File:7
「逃げるか捕まるかですね。」
「捕まるなよ、死にものぐるいで逃げろ。」
「どうしてですか?」
「どうしてって…捕まったらどんな目に合うか分からないだろ。それともなんだ、捕まりたいのか?」
「どっちでもいいです。」
相変わらずどっちつかずな答えにもやもやしてしまう。逃げる気が本人になければいつか誰かに捕まる時が来る。忘れた頃に死体になってあがってくるのではと案じてしまう。
「頼むから出動の度に俺と再会するのはやめてくれ。」
頭を抱えて項垂れてる狡噛。がそれをどこか遠くを見るように見下ろしていることには気がつくはずもない。ニュースの音がするだけの部屋に動かずただ立ち尽くす。
頭を上げた家主は電源が切れたように動かず目を伏せる少女を見上げた。違う次元を見ているような雰囲気が異様だった。
「座らないのか。」
その声に反応して視線が交わされる。ぼんやりと曇った瞳には何も映っていなかった。は頷いたり返事をしたりすることもなく狡噛とは反対の方へ腰掛けた。大人二人分は間が空いている。いろいろあったせいか警戒されているのか、だとしたらリスクを負ってもなぜここに来ることを選んだのか。恐らく彼女に聞いたところでなんとなくか分からないと言われるだけだ。考えるだけ無駄か。
《お風呂の準備が整いましたよ。色相がクリアになる入浴剤はいかがですか?》
「いらん。、先に入れ。」
「いんですか?」
「ずっと冷えてただろ。風邪ひかないうちに温まった方がいい。」
「でもさっき狡噛さんが温めてくれたじゃないですか。」
「ばっ、!」
なぜそういうことを真顔で言うのだろうか。一人だけ恥ずかしくなっていることも恥ずかしい。狡噛は追い払うようにをバスルームへ向かわせた。一人になったリビングにで頭を掻きむしる。顔の熱がまだ引かない。
《ほうほう!告白するなら花束が喜ばれますよ。人気のタイプは…》
「いらん!いいからニュースを見せろ。」
《本日の厚生省の推薦ニュースはこれで終わりです。》
いつの間にか一周したらしい。もう一度同じ映像が流れていた。
「なら過去三日分だ。」
《了解しました!》
すでに見たニュースが始まるが頭に全く入らない。結局眺めているだけだ。あんな一言に翻弄されるなんて情けない。