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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第7章 File:7


前方に真っ直ぐ伸びた道路には確かに赤いランプが塊になっているのは見えるがさすがに誰がいるかまでは分からない。
というより見えない方が普通だとも思う。

「お前、目が良すぎないか。」

「そうですか?」

なんとなく顔を見合わせた二人のうち狡噛だけはその目を見て背筋が凍りついた。
一瞬だがそれは獣か何かの目であったように見えたのだ。直ぐに見慣れた人の物に変わったが、確かに白目がなく黄色い虹彩が代わりに眼球の殆どを占めていた。
口が開いたまま固まっている狡噛を不思議に思い、どうかしたのかと問えば恐る恐る目について触れてくる。

「目、ですか?」

「ああ。さっき違う目をしていたように見えたんだが…」

「もしかして、これのことですか?」

と、はいとも簡単にその瞳を再び変えて見せた。変わる瞬間ときたらやはり虹彩が黄色く変化しながら白目を侵食していく。それが一瞬の間に起きる。
狡噛は普段と別の眼球を持つ彼女に言葉を失っていた。

「こうすると遠くがよく見えますけど、みんなできるんじゃないんですか?」

「普通は…ない。光に応じて瞳孔が変わることこはあってもそれはない。」

「そう、ですか…」

人の目に戻ると途端に長い睫毛がそれを隠すように伏せられた。普通ではないことにショックを受けたのか、それまで楽しそうにしていた雰囲気が一気にいつもの彼女に戻る。
普通でいるというのは難しい。誰か決めたか分からない平均の中に自分を当てはめなければいけない。
そういう意味で言えば狡噛も普通の部類ではない。人並み以上の頭脳に加えて屈強な肉体と精神を兼ね揃えている。そういう人間はこの社会で一般的ではない。だから公安局の適性もでるのだが。も知識こそないもののそれなりに詰め込めば頭は良い方だろう。運動能力でいえば刑事課にいる誰よりもあるかもしれない。廃棄区画で生きて来なければそれなりの適性が出ただろう。ここまで成長してからの社会復帰は現状の社会体制で考えると現実的ではない。ただし課題には少なからずなっている。少しでも状況がよくなるまでは下手に動かない方がいいだろうか。

「狡噛さん。」


「ん?」

ぼんやりと考えているところを呼び戻された。何度か呼ばれていたかもしれない。
は不安の表情をみせていた。

「私、どこに帰ったらいいですか?」

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