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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第7章 File:7


ゆっくり食事を終え会計をすませ、呼び出したエレベーターを待っているところだった。エレベーター前の広告ディスプレイには屋上庭園の特別夜間開放について記されている。

「ちょっと風に当たらないか?」

「風に当たる?」

「気晴らしに冷たい夜風に当たるんだ。」

「はぁ…」

「面倒くさいな、行くぞ。」

うまく伝わらないの返事は放って『上』のボタンを押す。下りより早くきたそれに彼女の手を引いて乗り込んだ。
ただほろ酔いの熱を気持ちよく冷ましたいだけだ。だがあまり酔ってると思われたくもない。それも引いて掴みっぱなしの手の熱で伝わりそうだ。
屋上階に着くとすぐ細い廊下が一本のびていてその先のドアの向こうが外だ。
外気を受けて重くなる扉を肩を使って押し開けると、思っていたよりもその空間は広く緑もよく手入れがされている。恐らくは全てホログラムだが。
は向かい風に髪を靡かせ、体全体で風を受け止めるように手を広げた。肺一杯に冷たい空気を吸い込み一気に吐き出すと清々しい気分になれた。

「風にあたるってこういうことですね。」

彼女は夜風をまるで纏っていた。全身で感じるようにくるくると舞って末広がりのスカートがふわりと浮くと白い太腿が露わになる。
狡噛にはそれが幻想のように見えていた。全てホログラムなのではないかと思う程出来すぎている。
庭園の木がざわめくのも星が煌めくのも今では作り物だ。それに不思議なほど溶け込んでいる彼女は本物の筈なのにどこか嘘のよう。

「…綺麗だな…」

口から自然と出た言葉だった。今目の前にある全てがそう見えた。自分で思っているよりも酔っているのかもしれない。
ぼんやり眺めているとは風を浴びながら庭園の奥へと走っていった。腕を翼のように広げる姿に、いつか本当に飛び立ってしまうのでは案じてしまう。暗がりに消える彼女を追いかけると柵に手をかけて遠くを見ていた。今度は籠に閉じ込められた鳥のようにも見えた。その隣で同じように柵に腕を乗せて寄りかかる。風は毛先を優しく揺らす程度に吹いた。

「狡噛さん。」

「ん?」

遠くを見るは何かを指差す。

「あそこにギノさんがいます。」

「はぁ?!」

どれだけ目を凝らしても狡噛には人の一人すら見えない。一体何階にいると思ってるんだ…。

「ほら、あそこ!」


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