• テキストサイズ

BERKUT【PSYCHO-PASS】

第6章 File:6


軽く挨拶を交わす二人を交互に見るに、佐々山はこっそり手を振った。それに小さく振り返せば佐々山は満足そうな笑顔を見せた。も無意識で綻ぶが前を歩く狡噛は気づいていない。
エレベーターに乗り込み地下駐車場まで降りる間も会話はなかった。ただ互いに気づかれないように顔色を伺っていた。
暗い駐車場に出ると狡噛は車を取りに行った。
待つように言われたはその場でじっと動かないでいた。入口の両端にいる警備ドローンはまるで彼女を監視するように首を動かす。タイヤがコンクリートを擦る音が聞こえると車はの前で止まる。助手席側にぐるりと回りドアを開けてシートに腰掛けた。


「…」


その声は静かだが狡噛のものではない。は反射的に運転席を見た。サラサラとした前髪が揺れると、双眸がこちらを捉えた。久しぶりに互いに顔を合わせた。なのに嬉しくはない。


「センセイ…狡噛さんは?」

「車のエンジンがつかないみたいだから整備を呼んでいるよ。間もなく終わるだろうね。」

はこの男の全てを見逃すまいと目を離さなかった。

「そう警戒しないでよ。そろそろ帰っておいでって言いに来ただけだから。」

彼は緩やかに口端をカーブさせて一見柔らかな面持ちだ。
それでもの眼光はより鋭くなっていく。

「…今からみんなと出掛けるの。」

「お友達ができたの?」

「…どうかな。」

「迷惑をかけないようにね。お礼はちゃんとするんだよ。」

は顔にでないから言葉できちんと伝えるように、と。
まるで父が子に教えるように彼は行った。

「わかってるよ…」

はドアを開けて再び車外へ出た。鍵は開いたままだ。無理に連れ帰る気は毛頭なかったのだろう。

「あまり遅くならないようにね。」

はそれに返事することなくドアを閉めた。
車はやがて走り出して駐車場を出ていくと入れ替わるようにもう一台がやってきて助手席の窓を開ける。今度は狡噛の顔が見えた。


「悪い、待たせたな。」

は黙ったまま車に乗り込むとすぐにシートベルトを締めた。

「狡噛さん。」

「ん?」

「いつも、ありがとうございます。」

「なんだ、急に。」



/ 260ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp