第6章 File:6
彼女にとって一番良い結果を出すと思って選んだ。自信もあった。だが全ては間違いだったのだろうか。言葉を失う狡噛を見てが口を開く。
「そうでもありません。」
佐々山の言葉を否定する声に視線が集まった。先程までの小さく消えそうな声とは違い明瞭で意思を持っている。
「狡噛さんは私にとって最善の方法を選んでくれました。本当は確かめたかったことがあったけど、私が望まないから諦めてくれました。上手くやれなかったのは私のせいです。」
「…」
「あの女の人、すごく怯えていました。彼女も悪くないです。なのに濁らせてしまって…」
「もういい。」
居たたまれなくなった狡噛はに寄り添った。それしかできなかった。こんなことになったが彼女は誰も責めたりしない。ある意味いつも攻撃対象は自分自身だ。それが彼女のクリアカラーの秘訣でもあるのかもしれない。
宜野座は彼女の言葉が終わるや否やドミネーターを向けた。
佐々山も狡噛も止めたが局員を怯えさせる何かが彼女に潜んでいるとしたらシビュラシステムが暴くはずだと言う。
『犯罪係数26。執行対象ではありません。トリガーを、ロックします。』
ドミネーターの光が赤く変化し、ロックがかかったことが分かると狡噛は内心安堵していた。
「彼女に脅威はない。これで示された。」
彼なりの配慮のつもりでもあった。犯罪係数が計測されないのならどんな事情にせよお咎めはない。たとえ彼女が化け物と言われていても、だ。
「監視官、そういうところもデリカシーがないっていうんだぜ。」
「っ!俺のは仕事だ!」
「なんだ、ギノ。俺のは仕事じゃなかったって言いたいのか?」
「そ、そうではないが…」
捜査に来ているはずなのに何故こうも和やかでいられるのだろうと、彼女には理解できなかった。傍らで笑う佐々山を見上げれば彼も目を合わせてきてにっと歯を見せた。
は不思議なものでも見ているように目を見開いていた。
「なんだい、惚れんなよ。」
「気持ち悪いぞ佐々山。」
「妬くなよ狡噛。」
「誰がだ。」
狡噛はこめかみに血管が浮き出そうになるのをぐっと堪える。佐々山はこういうやつだと頭に言い聞かせるも、このやりとりに何を思ったかはくすと小さく笑った。狡噛と佐々山はそれを見逃さなかった。