第5章 File:5
薄暗い部屋を蛍光灯の明かりとディスプレイから溢れるライトが周りだけをぼんやりと照らす。
今程までけたたましく鳴っていた警報が止み、表示された何かを表す曲線は穏やかなに波打っていた。
その前で男は静かにディスプレイを眺め、時折キーボードを打つ。旧式のキーボードはやや外装が剥げていてかなり使い込まれている。今も警報に合わせて打ち込んだばかりだ。
ブルーライトを遮断する眼鏡はやや色が入っているが、外して疲労の溜まった目をこすった。中年まではいかないが青年とも言い難い風貌の男は、散乱した書類と配線でごたついている卓上に置かれたマグカップを口に運んだ。冷めたコーヒーだ。美味しくはない。本物ではないから薫りも少ない。
「もうすぐだね。」
男は嬉しそうに呟いた。聞いている者は他にいない。その言葉は闇に溶けていくだけだったが、口にせずにはいられなかった。
ディスプレイに映った少女の顔の横には73%と記されていた。