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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第5章 File:5


もっと自分を大切にするべきだと伝えたいが己がそれを今言える立場でもない。喉奥まで出かかった言葉を飲み込んだ。
はただぼんやりと外を見ている。なんとなくだが目も合わせてもらえていない気がする。仕方のないことなのだが。
狡噛は逃げるように浴室へ向かった。身体にまとわりつく酒と煙草の臭いをどうにかしたかった。シャワーの湯を頭から浴びて昨日の事を考える。だがどうにも一係の刑事部屋を最後に記憶は途絶えている。二度と深酒はしてはいけないと肝に命じた。彼女は減るものではないと言っていてそれは狡噛にとって救いの一言ではあるがやはり簡単に片付けていい問題ではない。気まずいが調査のことも話さなければならない。調査が取りやめになったらある意味で全部含めて方がつく。だがそれはそれでやはり無意味だ。
すぐ確認しよう。万が一また暴れだしたとしても、いつもより体はすっきりとしているからどうにかなるかもしれない。狡噛は濡れた髪をタオルで拭きながら浴室を出て着替えた。リビングに戻ると食事がすでに出されている。
モズがどこからともなく現れて肝臓を労り疲労回復を促すメニューだと言っていた。

「はもう食べたのか?」

ソファに膝を抱えて座り窓の外を眺める彼女はただ頷いた。
どことなく儚げな姿は自由にしてあげているつもりがここに繋いで閉じ込めているようにも見えた。

「。」

もう一度呼ぶと彼女は気怠く首を向ける。

「お前を保護したときの話をしたい。」

は頷くことなく黙っていた。

「お前は廃棄区画内を何者かに追われて逃げていた、あれは誰なんだ?」

「わからない。」

「追われた経緯は?」

「私が逃げたら追いかけてきた。」

調子よく答えが返ってくるのをいいことに狡噛は続けた。

「はどうして逃げたんだ?」

「それは…」

の脳内ではその出来事がフラッシュバックしているのだろう。言いかけてそのまま文字通り動かなくなった。
狡噛は今度こそは辛抱強く待つと決めた。彼女の気がふれないかが心配ではあるが今のところ異変もない。

「そう、捕まりそうになった…知らない人たちに。ただ外を歩いていただけなのに…。」

それだけの理由でしかないことに狡噛は納得がいかなかつた。本当にそうなのだとしたらこの前事件は解決したことになる。
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