第5章 File:5
「あぁ……逝く…逝くっ…ぁあっ」
男は抱きしめる力を強めて彼女の中に熱い欲を流し込んだ。中で脈打つ度に体がビクンと震える。しばらくそのまま動けなかった。というより、満足したのか眠りに落ちていた。
も最後には荒くなった呼吸をゆっくり整えてそのまま目を閉じた。
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「すまん!申し訳ない!!」
起きるなりボクサーパンツとTシャツだけ身に纏った姿で狡噛は床に額をつけて謝罪していた。
はそれをブリックパックに入った何かの果物味のジュースを飲みながら眺める。
どうやら今朝方の行為は事故であったらしい。彼は何一つ覚えていなかった。
目が覚めるとソファではなくベッドにいたことをまず不思議に思い、その横に脱ぎ捨てられているスラックスが目に入り、起きようと掛布を履いだら下半身が裸な事に驚き、とりあえずパンツは新しいものを履いてシャツは脱いで部屋着用のTシャツに着替えてリビングに出れば機嫌の悪そうな居候が目についた。俺はお前に何かしたか?と問えば彼女は無言で頷いた。最初は信じられないといった顔で固まっていた狡噛もだんだんと頭の整理がついたのか突然土下座が始まって今ここだ。
「本当に申し訳ないッ!」
「もういいですよ。」
はブリックパックがズーズーと音を立てたところで容器を振って中身がないことを確認してからゴミ箱に投げ入れた。そして冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと狡噛に差し出す。恐る恐る頭を上げる情けない顔をした男は今度は礼を言ってそれを受け取った。蓋を開けてボトルを逆さまに傾けてごくごく音をたてて飲むと口端から線のように水が溢れた。水は一気に半分以下になり蓋を閉めて手の甲で口元を拭う。
「情けないが全く…どうやって帰ってきたのかも覚えてないんだ。佐々山ととっつぁんと酒を飲んで…途中までは思い出せるんだが…」
そこまで言って苦し紛れの言い訳にしかならないと思い止めた。なんと言おうが取り返しはつかない。
「、本当にすまなかった。」
「だから、もういいですって。別に減るものもないし…」
聞き捨てならない発言に思わず狡噛は詰め寄るが、詰めた分距離をあけられたのでこれ以上近寄られたくないことは察した。