第4章 File:4
手際よくグラスに氷を入れて酒瓶の蓋を開けると仄かに酒の香りが漂った。
「お!初物かい。」
「日本が誇る銘酒の一つだ。有り難く飲めよ。」
黄金の液体がグラスに半分ばかり注がれるのをただ眺めていた。よくもまあ手に入れたと思う。恐らくはオークションだろう。旧世代の代物は高値で取引をされているが執行官はそのあたり自由にできる。
「まあまずは乾杯といこうや。」
征陸がグラスを持ち上げるので三人はそれに合わせた。カチンと音が響き、それぞれ口に含む。
狡噛は恐る恐る少し口に入れると、不思議な苦味が広がり飲みこめば体のどこを通ったかわかるぐらい熱くなった。
「なんだこれ…!」
喉を抑えて眉間に皺を寄せる狡噛に二人は笑った。
「これが本物だよぴよ噛。」
「それやめろって言ってるだろ。」
狡噛は征陸が用意していたミネラルウォーターのボトルを受け取ると半分ほど流し込んだ。それでもまだ焼けるような熱さは消えない。
佐々山はすでに無くなりそうになっているグラスを置いてつまみになるものを探しに行った。
「それで、あの子の調査で分かったことはあるのか?」
狡噛は自分の集めた情報をデバイスから表示させた。
鳥の写真が出ると征陸は感嘆の声をあげていた。
「は病気を治す名目で何者かに引き取られ手術を受けている。」
「こいつぁ可哀相に。腎臓も子宮もとられてやがる。」
つまみにナッツを持って戻ってきた佐々山もその写真には眉をピクリと動かした。
「さらには脊髄や骨の随所にもなにか仕掛けをつけられている。真流さんにも頼んだがスキャンしただけでは何も分からなかった。」
執行官二人は顎に手を添えてうーんと唸り、征陸は最後にとっておいた気になる点について狡噛に問う。
「このイヌワシの画像はなんだ?」
「これはの背中から生えてきた羽根の遺伝子を解析したらイヌワシと同じ構造だということが分かった。」
そこまで話して二人は沈黙した。その反応は狡噛にも理解できる。思考が追いつかないだろう、この件は遙かに人知を超えている。
「ちょ、ちょちょ待った、ちょっと待った!」
佐々山は大きく手振りでその場を制して見せたかと思うとそのまま自分も停止した。
「なんだ佐々山。」
「羽根が背中から生えてくるってどういうことだ?」
「そのまんまだ。」