第4章 File:4
狡噛は一日中頭を悩ませていた。
調査をするためにはから被害にあったと言わせるしかない。だが被害者だと本人は思っていないから今日の今日まで全て難航したのだ。
「とっつぁん、とっつぁんならどうする?」
和久が居ない隙に狡噛は征陸に話した。ベテラン刑事なら何か知恵を貸してくれると思った。
「どうだろうな、実際問題あのお嬢ちゃんが事件性を感じていないなら、確かに俺たちが追う必要もないだろうよ。ましてや廃棄区画の連中のやってることだろ?正直、サイコパスが濁ることをやってるような奴は大勢いるだろう。」
「それでもは逃げていて、俺たちが保護した。逃げるような理由があったなら…」
「その理由だってもうないかもしれないだろう。一人はエリミネーターで吹っ飛んだんだから。」
「それは…でもあいつは妹の名前を出すと急に発狂しだす。妹に何か関連しているのかもしれない。」
「もしくは妹が人質とかな。」
「人質?なんのために。」
「そんなの分かるわけないだろ。あくまで可能性の話だよ。」
妹が何者かに人質に取られているとしたらなぜ話さないのだろう。いくらでも公安局に伝えるチャンスはあった。今もだ。それでもしないのは、常に見張られているか、人質はもともといないか、その他…。
狡噛は組んだ手に額を乗せてため息を吐いた。仮説ばかりでなんの根拠もないことばかり。やはり彼女から聞かなければ何も始められない。モンタージュも方法としてあるがいくらなんでも酷すぎる。
和久が戻ってきたので話は止めた。
一人で悩む狡噛の姿に征陸はどうにもやりきれない気持ちでいた。
彼が刑事の感を身につけるにはまだ先のようだが、確かにが何か良くないことに片足どころかどっぷり浸かっていることは征陸にも分かっていた。だだ彼女を保護した場所が悪かったのかもしれない。廃棄区画内で未成年が追われていたくらいなら大したことない。それは残念ながら彼女の安定した色相が物語ってしまった。
ストレス過多になっている上司に対してできることはあるだろうかと考え始めて、やはりこれかとこっそり一係の執行官にメッセージを送った。