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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第21章 理想郷を求めて


ここで終わりか…。あとは真っ暗になって分からなかった。
次に目を覚ました時は治療もある程度終わっていた。
さらに停戦監視団が付近を占拠し、事態は終息へ。
指揮していたのはガルシア。彼は拾ったリボルバーを渡しに狡噛の元へ来た。

「お前、血まみれすぎないか?」

まだズキズキと首が痛む。動脈が切れたせいで血がたくさんでた。実際はそこまで酷くはないが見た目が重症に見えるのかもしれない。
さらにテンジンも駆けつけて泣きながら懐に飛び込んできた。

「馬鹿狡噛!無茶しないで!」

女の子に泣きつかれるとは思ってもいなかった。狡噛は困ったように微笑む。その心配を嬉しく思う。

「狡噛、お前お子様連れだったのか。」

「私は子供じゃありません!!」

頬を膨らませて怒る少女に周りからは笑いが起きた。平和な笑い声だった。ガルシア率いる停戦監視団のおかげで駅は救われ、物資も半分以上は無事だった。

「おーい狡噛。」

キンレイの呼ぶ声がして、振り向くと、こっちに来るよう手招きしていた。

「どうした?」

案内されるまま行くと、救護班が数名何かを囲んでいた。
その輪に入ると中心にいたのはベールクトだった。珍しく地面に座り込んでいる。琥珀色の瞳が見つめてきた。

「狡噛のベールクトだろう?」

「いや、そういうわけじゃないんだが…」

その場に屈んで目線を近づける。この距離で見るのは初めてだった。常々思っていたがやはり大きい。羽根の一つを見ても巨大だ。

「狡噛が倒れた後、こいつが空から降りてきて武装ゲリラを一緒に蹴散らしてくれたんだ。」

「そうなのか?」

改めてベールクトを見つめる。奴の目は何時も真剣に見えるのは鋭さのせいか。こいつはやはり自分を食べる気ではなく助けるためについてくるのだろうか。

「その時に怪我をしたのか全然飛ばなくて、でも誰もこいつに怖くて触れないんだ…」

この大きさじゃ無理もない。噛まれたら腕を持っていかれる。触れるのは狡噛でも躊躇した。

「怪我してるのか?」

話しかけるのも馬鹿げている。だがこの琥珀色の目は何かを訴えているように見えた。だからこちらの言葉も伝わるのだと思った。暫くその目を見つめているとベールクトは右翼を少し広げてみせた。爆風で飛んだのか木片が刺さっていた。やはり分かっている。

「抜くぞ、我慢しろよ。」
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