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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第21章 理想郷を求めて


また朝がきた。熱は引いた。傷も正しく治りだしている。あの男からもらったホワイトリカーの消毒液を傷に塗った。染みて痛いと効きそうな気がする。ある物で食事を済ませ直ぐに出発した。時々風が強く吹く。こんな日は飛びづらそうだ。空を見上げると今日はただ青空と雲が流れているだけだった。いつもいるものと思っていたが、思い返すと声が聞こえてから見上げることばかりだった。

(いつも近くにいるわけではないにしても、随分遠くまでついてきたな。)

動物は本来縄張りがある。それを越えて移動するのは珍しい。だが縄張りが場所ではなく人ならそれもあり得る。狡噛を中心にそれが広がるのだとしたら…。

(まさか、な。)

そんなときにふと思い出す。ずっと昔に翼を持った少女に出会ったことを。今となっては懐かしい。あれから十五年は経ったか。彼女は今どうしているだろう。生きていれば大人の女性だ。元気にやっていればいいと思う。

一日歩いて町についた。乾いた町で通りに普通の人はいない。というのは訳ありの人間はいるということ。物乞いやゴロ付き。それと野良犬。とりあえず宿を探した。ここも傭兵がよく来るらしい。普段なら追い返すが狡噛が日本人と分かると快く泊めてくれた。一泊だけの約束ではあるものの、土埃のかぶっていないベッドで寝れるだけ有り難い。歩き通しだが傷の具合もいい。その日はよく眠れた。
次の日は宿の店主に聞いて銃器を扱う店を教えてもらった。銃弾を補充し、タバコも買った。そのあと酒場に寄って食事を取りながら情報収集。チベット・ヒマラヤ同盟王国は今紛争が絶えず、近寄る者がいないという。それにここからだとまだまだ距離がある。なにせ山を越えなければならない。そんな話をしていると日本人だと聞きつけたゴロツキ共が襲ってくる。至極面倒だった。流れ者の狡噛は日本にいたころとは違う。赤子の手を撚るようにして店の外に放り出した。だが一人、諦めの悪いやつが狡噛に銃を向けた。が、狡噛は気づかない。発砲音が響き渡った。銃を持った方が倒れた。ナイフで刺されている。他の奴がやった。離れた席にいたスキンヘッドの男だった。この男も傭兵だった。狡噛がゴロツキ数名を簡単にのしている所を見ているのが面白かったらしい。自分の率いる隊に誘いもした。それを流すように断る狡噛を自由で無茶だとまた面白がる。
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