第3章 File:3
疼く背中が気になるようではずっと掻いていた。
狡噛はドローンの片付けを天利に頼むと自分ものとなりに腰掛ける。
床に打ち付けた背中にはまだ違和感が残り投げ飛ばされ時に軸となった腕は掴まれたところが青くなっていた。
「ごめんなさい、また余計なことをして…」
「いや、ちゃんと説明しなかった俺も悪い。それに最後は助けられたんだ。ありがとう。」
穏やかな声には内側から緊張が解けていくのを感じていた。背中の疼きも同時に消えていった。
「大丈夫か?」
「はい。」
「見せてみな。」
は黙って座ったまま背を向けてシャツのボタンを外し始めたので狡噛は昏田たちから見えないように自分が間に入って彼女を隠した。
腰までシャツを脱ぐと背中を突き抜ける小さな羽根は肩甲骨を中心に肩や腰にも少し現れていた。
「どうなってますか?」
「うーん。さっきより広がってるな。」
は癖になっているのかすぐに毟ろうとするので触らないよう言い聞かせた。
再びシャツを着せて、ボタンを止めさせる。
「真流さんならきっと方法を見つけてくれる。もう少し我慢だ。」
「…はい。」
「よし。」
大きな手で彼女の小さな頭を宥めるようにポンポンした。
「なんか親子みたい!私もポンポンしてください!」
ドローン片付けましたよと、まさに尻尾を振って駆け寄ってきた天利に仕方ないなと同じようにした。
それを昏田は面白くなさそうに見ていると「なんだお前もか」と呼ばれてさらに苛立っていた。
時刻は正午を回る頃。
狡噛はを連れて公安局内の食堂に来ていた。
食べたいものを決めるとは先に席についているよう言われて適当なところで座って待っていた。
狡噛はお盆を二つ持っての前にクリームパスタを置いて自分はカレーうどんにしていた。
「いただきます。」
「…いただきます。」
手を合わせて食事の挨拶をする狡噛をみて同じようにしなければとも動きを合わせた。
そして彼が一口食べるのを見て自分も口に運んだ。
「結構うまいだろ?」
その問いには答えにくくは首を傾げた。
美味しいがよくわからなかった。