第3章 File:3
味や見た目が違うともすべては麦からできていると思うと粉っぽく感じていた。それはまさにこの社会に適さない体質とも言える。
「好きな食べ物とかないのか?」
ない。はただ頷いた。
一体何を食べて育ったのか疑問に思う。そもそもこの目の前で無表情でパスタを口に運ぶ少女の素性はほとんど分かっていない。詳しい話を聞こうにもまた暴れだされたら最悪は公安局内でのサイコハザードだ。慎重にいかなければならない。
「狡噛さん…」
「ん?」
は手にしたフォークを止めていた。
相変わらず目線はどこを見ているのか分からない。
「汁、飛んでます。」
「ん?」
うどんをすすりながら聞いていれば、その瞬間もカレーの汁が撥ねた。
それはの頰に着地する。
「……。」
は黙って席を一つずれた。
向かいにいるから被害にあうと思ったが、まるで汁が追ってくるかのようにまた撥ねる。
ここは四人がけの席でもう椅子をずらさない限り場所はない。
は再び席を立つと狡噛は悪びれる様子もなくまた撥ねたか?と言っていた。本当に気がついていないし気をつけもしないのでたちが悪い。
はテーブルをよく観察して犯人の隣には汁が撥ねていないことが分かると狡噛の隣に座って再びパスタを食べすすめた。
すると今度は狡噛の向かいに女の監視官が現れた。
同期の青柳だった。
「あら、並んで仲良しね。」
「おう、青柳。」
お疲れと口をもぐもぐ動かしながら狡噛は返す。
「宜野座君から聞いたわよ。女の子預かってるんだってね。あなたがちゃん?」
はやはり無言で目を合わさずに頷いた。
「廃棄区画で保護した。身寄りがいないから社会復帰するまでの間だけな。」
「狡噛君に年頃の女の子のお世話ができるとは思えないけど大丈夫なの?」
「余計なお世話だ。」
狡噛はまたうどんをすすると今度は青柳の額にカレーの汁をたっぷり吸ったネギが飛んだ。
青柳は半ば苛つきながら気をつけてと言って額をティッシュで拭いていた。自分が被害にあって初めては仲良く狡噛の隣に座っているのではなく汁を避けているだけだと分かる。
「ちゃん、狡噛君に変なことされたすぐに二係においでね。」
「変なことってなんだ。」