第3章 File:3
だがまだ起き上がろうとするので狡噛は大男に馬乗りになって顔面を激しく殴り続けた。これで体力がなくなり終わるかと思ったが大男は狡噛の殴る腕を捕まえて捻り潰そうとした。
「ぐぅ…っ!」
流石にドローンの力なので下手をすれば折れてしまう。
自分の手を掴む大男の手にそれ以上力が入らないよう抑えると狡噛はそのまま腕一本で投げ飛ばされた。
その頃外野では狡噛の叫びに気づいた天利がドローンを止めようとタブレットを操作していたのだが誤って一つレベルを上げてしまっていた。
さらにシャワーを浴びて戻ってきた昏田がこれは面白いからそのままにしていようとタブレットを天利から奪い取る始末。
「狡噛さん怪我しちゃうよ!」
「エリート監視官様がこんなんで怪我して泣き出すようじゃダメだろ。」
それに彼は肉弾戦に強い。お手並み拝見といこうじゃないか。
これからが見どころだと思ったが案外勝負は早くついた。
投げ飛ばされて背中を痛める狡噛に向かってくる大男をが横から飛んできて鋭い蹴りを入れていたのだ。大男はステージ外に飛ばされ落下していった。それが見えなくなったところでトレーニングは終わり、景色は元に戻る。
息を切らすと唖然とする監視官と執行官。
狡噛はゴーグルを外して起き上がるとのそばへ行って彼女のゴーグルも外した。
「驚いたな、どこで覚えた?」
は首を横に振った。
「真似を、しました…。」
「真似?俺のか?」
「はい。」
真似しようと思ってできるのなら相当の運動神経の持ち主だ。数時間前に狂ってデスクに飛び乗った時も身のこなしは軽いと思ってはいたが、まさかここまでとは予想もしなかった。
天利はすごいすごいと言いながら吹き飛ばされたドローンを起こして状態を確認した。
「お前たち気づいていたならなぜの電源を切らないんだ。」
狡噛の打撃で新しい凹み傷ができていたが使用に問題はなさそうだ。
「私止めようとしたら間違ってレベル上げちゃって…」
それを聞いて狡噛は頭を抱えた。未だ驚いている昏田は面白がって止めるなと言ったのだろうと予想はつく。
痛めた腰を叩きながら捨てられたようになっている自分のタオルを拾って、床に接した面と逆の方を使って汗を拭いた。
はといえば俯いたままベンチに静かに座った。